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9-5(P92)

司馬さんにクリスさんを預かってもらった後に俺は再びゼロスペースの中に入った。準備は色々とする必要がある。まずはクリスさんの言っていた魔剣ティルヴィングを呼び出すことにした。


「こい、ティルヴィング!」


そう叫んだ瞬間、一陣の風が通り抜けたかと思うと天に掲げた俺の手に一振りの片手剣が収まっていた。これがティルヴィングか。凄まじい軽さだ。全く重さを感じない。しかしこれだけ軽いと逆に不安を感じる。攻撃する時にダメージを与えられるのだろうか。

本当に軽いよな、そう思いながら二、三回振っていると足元に違和感を覚えた。なんだか足元がおぼつかない。まるで飛んでいるような感覚である。おかしいなと思って足元を見て仰天した。本当に俺の足が空に浮かんでいたのである。


「おいおいおい、待てよ、なんで浮かんでいるんだ」

『恐らくはティルヴィングの特殊能力です。どうやら所有した人間に高速飛行能力を与えるようですね』


なんだって―っ!?

これは素直に嬉しい。昔、例の掌二つを前に構える必殺技同様、子供心に憧れたもんな。空を自由に飛ぶという夢が叶うという事だろう。嬉しくなった俺はゼロスペースを飛び出す様にして外に出た。そして周囲を確認した。

良かった、誰もいないぞ。

これなら飛べる。そう確信して思い切り空に飛び立った。次の瞬間、俺の意志に反して凄まじい速度とGが体中に負荷をかける。やばい、目が開けれない。息ができない。体の肉が引っ張られる。混乱する俺は急いで飛行を途中で中断しようとした。だが、凄まじい勢いであったためか、なかなか止まることができなかった。

ようやく止まることができた。そう思って目を開けて辺りを見渡した俺は絶句した。周囲がやけに冷たく暗かったからだ。さっきまで昼間だったのに夜のようだ。なんだか足元もふわふわしている。重力をまるで感じない。これではまるで地球にいないみたいではないか。悪い冗談だ。そう思って足元を見た瞬間に仰天した。俺の足元に蒼い美しい星の姿があったからだ。それはテレビの記録映像でしか見たことがない地球の姿であった。という事はここが宇宙。その瞬間に自覚した。息ができない。というか寒すぎる。眼球が飛び出そうになると恐怖しながら俺はもがき苦しんだ。


『一般に宇宙空間内で宇宙服を着ていない人体が深刻なダメージを受けるまでは10秒と言われています。血中酸素がなくなり、紫外線やガンマ線に直に晒されることにより皮下組織のはれ、重度の火傷が起こります。なお、真空下では水分は蒸発していきます。血液も例外ではなく沸騰しますので一刻も早く地球に戻ることを推奨します』


言われなくてもわかっとるわ!俺は慌てて地球に戻るように魔剣に命じた。次の瞬間、凄まじい速度で俺は地球に落下していった。そんな俺にインフィニティが語り掛ける。


『マスター、どこに…』

「…分かってると思うが、それ以上聞くんじゃないぞ。」


某有名サイボーグ漫画のラストシーンのように俺は大気圏落下による熱に魔法障壁による防御で必死に耐えながら地球に落下していった。




                 ◆◇◆◇◆◇       




クリスを連れて市内観光を行っていた司馬はふいに流れ星が流れたことに気づいて空を見上げた。


「人工衛星でも堕ちたかな」


珍しいことでもない。まあ、万が一に外宇宙からの侵略者であれば討伐に参加する必要があるが、今の気配にはそこまで禍々しいものはなかった。危険視することはないだろう。それよりも今は目の前の問題をどう解決するかを考えるべきだ。げんなりしながら司馬は同行者を見た。そこには口いっぱいにみたらし団子を頬張りながら、片手には数本の串焼き、片手にはソフトクリームを持って幸せ全開のクリスの姿があった。これがあのデモンズスライムの本体かと思うと溜息しか出てこない。どうでもいいがひとつずつ食えよ、口の周りをべたべたにしやがって。

これに負けたのかと思うと情けなくなった。クリスはそんな司馬の視線などお構いなしにみたらしを平らげると一口で串焼きをそのまま食べてしまった。串も一緒かよ。つっこみ疲れて最早言葉さえ出てこない。

市内観光に行ってから司馬は目につくもの全てを奢らされていた。WMDのカードを使用しなければ恐ろしいことになっていただろう。


「司馬君、司馬君、今度は寿司、みんなが食べてた寿司が食べたい!」

「お前なあ、いい加減にしろよ」

「だってみんなだけずるい!僕だって食べたかったんだもんっ!」


結局、司馬はクリスが飽きるまで食べ歩きに付き合わされたのだった。




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