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6-10(P62)




             ◆◇◆◇◆◇          




仁王立ちしながら気絶する自らの主を内部から観察しながら鑑定スキル:インフィニティは思った。何という無茶をする主人なのだ、と。人の事を普段から常識がないように言うが、自分だって人の事を言えないだろう。いや、後先を考えない分,自分より余程タチが悪い。

実のところ、インフィニティがこれまでに仕えた人間は晴彦以外にもいた。その歴史を辿ると古くは紀元前に遡るのだが、その多くは神託を受けた人間や預言者として人々に崇められた。だが、彼らの多くは理性的で計算高く、このような無茶は絶対にしなかった。だからこそ自らの身を顧みずに人のために行動する晴彦は異常とも言えた。実に奇妙な主だとは思いながらも不思議と嫌な気はしなかった。それはインフィニティ自身が晴彦という人間と共に行動することによってもたらされた変化なのだが、インフィニティにその自覚はない。

だが、代償は大きかった。オーバードライブによる過負荷のかけ過ぎによって晴彦の体内に流れる魔力回路自体が焼き切れてしまっている。この状態では二度と自らの身体で魔力を循環させることはできまい。脳の神経回路までは焼き切れていないとは思うが、最悪の場合は半身麻痺などの後遺症の恐れもある。目覚めるまでどのような不具合があるか分かったものではない。実質のところ、晴彦は二度と魔法が使えないと言っても過言ではないのだ。

さらには晴彦を庇ったワンコという女の腕もすでに壊死しかかっている。恐らくデモンズスライムが死に際に放った呪いが原因だろうが、恐らくあの両腕は最早切り落とさないと命に係わるだろう。

スライムの粘着体によって拘束されていたフェニックスは無事に束縛から逃れることができたようだ。今頃シェーラは元の身体に戻っているに違いない。

気絶している司馬もあと少しすれば起き上がってくるはずだ。意識を取り戻してからワンコの姿を見てからの晴彦の精神状態が若干心配ではあったが、なるようにしかならないため、あまり考えないことにした。そこにまで至ってようやくインフィニティは自分自身もあまりにも疲れているのだという事を認識した。スキルである自分が疲れるなど本来はあり得ない話だが、今は考えるのをやめよう。そう思った後でインフィニティは沈黙した。




             ◆◇◆◇◆◇       




戦いの行方を見届けたWMD東日本支部副司令のアリーシアは胸を撫でおろした。どうなることかと思ったが、司馬たちの活躍によって大惨事になることを未然に防ぐことができた。本当に良かったと思うと共に一刻も早く回収を急がせるべきだと判断した。特に剣崎壱美隊員と民間人の藤堂晴彦の負傷は甚大である。


「後方支援部隊は彼らの回収を急いでください。一刻を争います。」

「司馬隊長はよろしいのですか。」

「放っておいて大丈夫です。うちの人はあの程度でくたばるようなやわな鍛え方はしていませんから。」


アリーシアはそう言って夫である司馬の救助をバッサリと切り捨てた。実際のところ、殺しても死なないような頑丈な人を心配するよりも、実力が伴わないにも関わらず命を懸けて街を救った二人の重傷者を急いで助けるほうが重要だと考えたのだ。実際、モニターの一つにはすでに意識を取り戻しつつある司馬の姿が映し出されていた。恐らくはまた死に損なったとでも言っているに違いない。内心で安堵の溜息をつきつつ、アリーシアは直立不動のまま気絶する藤堂晴彦の方を見た。

ジャイアントキリング。格下のものが強者を打ち倒す番狂わせ。まさしく晴彦が行ったことはそれだった。役にも立たないと思われた勇者見習いが現役最強の司馬に変わって広域危険該当生物Sランクのクリーチャーを打ち倒したのだ。賞賛の気持ちがある反面、これからの事を思うと気の毒になった。この戦いを影で観察していたであろう裏社会の実力者たちに目をつけられた可能性があるからだ。それを思うとアリーシアは気が滅入る思いだった。




               ◆◇◆◇◆◇         









【特定条件を達成したことで魔王種の因子が目覚めようとしています。解放して上位種族へと進化しますか。】

はい/いいえ


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