5-14(P50)
それから一週間が経過したが、一向に魔神獣とやらは出現しなかった。いったいどういう事だろう。首を傾げた俺の頭の片隅によぎったのは誤情報ではないかという事だった。そのことをシェーラやインフィニティさんに話したが、そんなはずはないと首を振るばかりである。ただし、兆候がない以上は対応することも困難である。
まあ、備えはしておく必要があるな、そう思った俺は戦いの際に役立つ魔法を想像しておくことにした。今の自分に足りないもの、それは攻撃を受けた際に対応できる防御能力だ。神速を使えば回避することもできるだろう。だが、万が一に直撃した時に装甲が紙では一瞬にして消し炭になるのは目に見えている。インフィニティさんとの打ち合わせの結果に作成したのは次の魔法であった。
‹魔法障壁:絶›
消費MP100~1000
攻撃を受けた瞬間に発動する魔法陣型の防御障壁。自身を含めた半径5m以内の攻撃を相殺する。受けた攻撃のレベルに合わせてMPを消費、最大で1000のダメージを相殺する。
強力な魔法ではあるが、これだけでは燃費が悪いかもしれない。そう思った俺は錬金術によって魔法の装飾具を作成することにした。まず考えたのは自動発動である程度の攻撃を防ぐことのできる腕輪である。というわけでああでもない、こうでもないと試行錯誤した結果に作り上げたのは次のアイテムであった。
‹守りの腕輪›
防御+120。腕につけるアクセサリー。装着者のサイズによって変化する。自動防御で発動する。装備できる上限数は一人一個まで。
期待していたよりも防御力が伸びなかった。インフィニティさんの話だと攻撃や防御に使用できる魔法具を作成する際は常時発動型である場合、籠めた魔力の十分の一の力しか効力を発揮しないらしい。それ以上の魔力を籠めようと思ったら意識を失わずに何日も不眠不休で魔力を籠め続ける必要があるそうだ。流石にそれは無理だよな。
そのことを話すと正式な武器や防具に関しては司馬さんが支給してくれるということだったのでそれを待つことにした。なお、武器やオリジナルの攻撃魔法を作ることに関しては固く禁じられた。俺の魔力で下手なものを作ってそれを何者かが悪用したら大事件になるからだということだった。確かにMP1000を使った攻撃魔法などは大規模殺戮兵器にしかならないだろう。
そうこうしているうちにも数日が過ぎて俺のステータスもめきめきと伸びていった。同時に筋力アップによって増えた俺の体重も基礎代謝が上がったせいかどんどん減っていった。そんな俺のステータスを表記すると以下のとおりである。
藤堂晴彦
年齢:32
Lv. 4
種族:人間
職業:恐怖を知る豚
優しさを知る豚
異界の姫の豚騎士
称号:電撃豚王
公園の怪人『豚男』
強制送還者
体力: 106/106➡186/186
魔力1262/1262➡1270/1270
筋力: 116➡176
耐久: 104➡304(守りの腕輪なし184)
器用: 70➡155
敏捷:121➡ 211
智慧: 17➡56
精神: 115➡165
魔法耐性: 107➡227
ユニークスキル
〈ステータス確認〉
〈瞬眠〉
〈鑑定〉Lv.∞
〈アイテムボックス〉Lv.0
スキル
名状しがたき罵声
金切声
肥満体質【111/58】➡【103/58】
全魔法の才能
運動神経の欠落【48070/65000】
人に嫌われる才能【106320/120000】
〈アダルトサイト探知〉Lv.10
【無詠唱】
【精霊王の加護】
【努力家】
【魔力集中】
【魔力限界突破】
【限界突破】
【インフィニティ魔法作成】
【電撃耐性(大)】
【神速】
【二回行動】
【思考加速】
【地形効果無視】
【オーバードライブ】
【クロックアップ】
〈NEW!〉【孤狼流剣術:初級】
‹インフィニティ魔法›
魔法障壁:絶
◆◇◆◇◆◇
異変が起きたのはそれから数日後の昼下がりだった。
その日は訓練もなかったので自室でのんびりしていた俺の足元が急に揺れ出した。尋常な揺れ方ではなかった。地震にしては不審な揺れ方だった。空間そのものが揺らされたような巨大な振動。異変を感じて外に出た俺とシェーラは絶句した。黒雲が渦巻く市街地の中心の上空から巨大な何者かが降り立とうとしているのが分かったからだ。あれは一体なんだ。
絶句している俺の脳裏に厳かな鐘の音が一度響き渡った。それはまるで葬列の際に鳴らされる鐘のように不気味であり、生理的な嫌悪を覚えるものであった。頭が割れるかのような頭痛を覚えた俺は思わず頭を抱えた。俺の異変に気付いたシェーラが駆け寄る。心配する彼女を制して巨大生物を見ながら俺は理解した。あれが魔神獣であることを。




