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5-12(P48)

「俺の強さが化け物じみていると言ったが、俺からしてみれば兄ちゃんのスキルの方が余程化け物だぜ。」


ゼロスペースから出るなり、司馬さんにそう言われた俺は頭を掻いた。確かに言う通りかもしれない。今まで気にしてこなかったが、俺のスキル構成はあまりにもおかしい。その事に関してはひとつだけ推測できることがあった。アイテムボックスはともかく、マイナススキルの克服報酬というのがおかしすぎるとしか思えないのだ。そのことを司馬さんに話すとなにやら納得したようだった。


「…確かにな。だが、マイナススキルを克服できると考えること自体がおかしいんだよ。」

「どういうことです。」

「普通の鑑定スキルでマイナススキルの克服経験値なんて表示されるなんて聞いたことがねえ。やっぱり異常なんだよ。お前さんの鑑定スキル:∞というやつは。」

『異常というのは心外です。優秀と訂正するように司馬に伝えてください。』


インフィニティさんの言葉に俺は苦笑しかなかった。そんな俺の様子に司馬さんが首を傾げる。


「どうしたんだ?」

「いや、インフィニティが異常ではなく優秀だと言えと…」


司馬さんは俺の言葉にきょとんとした後に大声で笑い出した。怒りださないことにほっとしながらも俺は対応に困って愛想笑いで答えた。


「ぶあっはっはっは!…いや、済まねえ、笑いすぎちまった。なんとも人間味に溢れたスキルだな。いい相棒じゃねえか。」

「たまにとんでもないことをしますけどね。」

「…多分、お前らはこれからもそうやってお互いに相談しながら成長していくんだろうな。そう考えるとこれからも目が離せないな、晴彦。」


司馬さんの言い方に俺は違和感を覚えた。あれ、今この人は俺の事を兄ちゃんでなく晴彦と呼んだよな。少しは認めてくれたという事か。なんだか嬉しくなった俺は今日の訓練も頑張ろうと決意した。




               ◆◇◆◇◆◇      




その日の練習は剣での基本的な戦い方の訓練だった。

銃が存在する現代社会ならば銃を使えばいいじゃないかと考える人もいるだろう。実のところ、俺もそうであった。しかし、実際のところは高位のモンスターに対して銃撃というのは効きづらいそうなのだ。というのも高位のモンスターは体の表面に闘気や魔法防御壁といった障壁を纏うことが多い。

そういった障壁を貫く力を一定の力しか発揮しない銃は持たないのだ。勿論障壁を貫通させるスキル持ちならば別であるが、そうでない場合は闘気を身に纏った近接武器で殴りかかった方が早い。体を伝う闘気は体から離れるほどに拡散するために遠距離攻撃には向いていないのである。というわけで近接攻撃が有効であるという座学を受けた後は基本的な剣の振り方、構え方、受け方や避け方といった一連の動きをレクチャーされることになった。

例によって剣道の防具を身に着けた俺は驚いた。今回教えるのが司馬さんではなくワンコさんだと言われたからだ。俺が戸惑っていると白い剣道着に着替えてやってきたワンコさんはムッとした顔をした。


「何、私が教えるのは不満なのか。」

「いや、そういうわけじゃないんですが。剣は扱えるんですか、ワンコさん。」

「だからワンコって言うな。…もうワンコでいいや。証拠を見せてあげるからその竹刀を構えなさい。」


戸惑いながらワンコさんに向けて竹刀を構えると彼女も竹刀を構えた。次の瞬間に鋭すぎる一陣の風が通り抜けていったかと思うと俺の竹刀と面はワンコさんの竹刀によって両断されていた。ぞっとした。何をしたかが全く分からなかったからだ。動きもそうだが、さらに恐ろしいのは面を両断しておきながら俺の頭には傷の一つもない点だった。ワンコさんは驚く俺の表情に、見たかとばかりに自信満々な笑みを浮かべた。やばい、この人、超カッコいい。


「ワンコ~、今割ったの俺の防具なんだけどな。」


後ろから冷たく言い放つ司馬さんの言葉にワンコさんは慌てだした。やばい、どうしよう、殺される。そういって割れた面を持ち上げて必死にくっつけようと試みるワンコさんに俺は魔法で元に戻せますよ、と伝えた。ワンコさんは小手を身に着けた俺の両手を握ってブンブン振りながら、「お前、いいやつだな」と繰り返した。やばい、この人、ポンコツ感半端ない。真剣な時とポンコツな時のギャップが半端ないだろう。気のせいか可愛らしいぞ。そんなことを思いながらその日は夕方までワンコさんの指導の下で訓練を行った。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 面と竹刀は少し早い程度では壊れないと思いますが 熟練者の竹刀は時速50km程なので 弾丸でもぶつけてるのですか
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