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5-10(P46)

 これまでの自分の人生の中で眠れなくなるという事自体がなかった自分が不眠症というものを経験することになるとは思わなかった。幾ら眠ろうとしても眠れなかった。何しろ訓練が終わってからも精神は臨戦状態のために全く休まらないのだ。瞼を閉じると聞こえてくるのは司馬さんの手拍子だ。

 一回は寝ろ、二回は起きろ。パンという音で寝ようとしてもいつパンパンと手拍子が聞こえてくるのか分からない。


 起きあがるのが遅れると目覚まし代わりに腹部へ強烈な蹴りが放たれる。


 手拍子がトラウマだ。ステータスは軒並みUPしたが全然嬉しくなかった。眠れなかった俺は暇つぶしに自分の能力値を見た。


「…ステータスオープン」




藤堂晴彦

年齢:32

Lv. 4

種族:人間

職業:恐怖を知る豚


体力: 36/36➡106/106(状態異常:睡眠障害)

魔力1258/1258➡1262/1262

筋力: 24➡116

耐久: 32➡104

器用: 12➡70

敏捷: 18➡121

知恵: 17

精神: 19➡115

魔法耐性: 29➡107


 強さの代償に色々と大事なものを失った気がする。睡眠障害以外にも筋力トレーニングの弊害があった。筋肉量が増えたことで体重が3kg増えたのだ。

あれほど努力して痩せたはずなのに何してくれるんだ、司馬さん。

 ステータスも軒並み100を越えている中で 知恵が17しかないというのはどういうことなのだろう。俺の脳裏に脳筋という言葉が浮かんだ。溜息をつきながらスキルの項目も確認していくと電撃耐性が中から大にUPしていた。あまり電気が効かなくなっていたから電圧を強くしていたという事か。インフィニティさん、容赦なさすぎるだろう。ふと瞬眠スキルを見てみると※がついていた。どういうことかと思い、カーソルをスキルに合わせる。


『トラウマによって瞬眠スキルは一時使用不能です。状態異常:睡眠障害が解除されるまではスキルを使用することはできません』

「……」


 インフィニティさんの注釈に突っ込む力もなくなった俺は笑うしかなかった。

 

 明日、司馬さんに自重してもらうように言うしかない。このままでは頭がおかしくなる。もう考えるのはやめよう。俺はそう思って掛け布団を頭から被った。しかし全く寝れなかった。規則的に鳴る時計の秒針の音を聞きながら早く朝が来ることを心から願った。

結局、俺が意識を失うよりも先に朝が来たのだった。




                  ◆◇◆◇◆◇          




 翌日の俺の疲れ切った表情を見て、流石の司馬さんもやり過ぎたことを反省したらしい。それはそうだろう。目にはクマ、体重は増えたはずなのに頬は痩せこけ、眼光だけが異様に鋭くなっているのだから。


「あ~…、なんというか、すまん」

「いいんですよ。それで今日も手拍子に合わせて筋トレですか。残念ながら睡眠障害で瞬眠スキルは使えませんよ」

「安心しろ。今日は冒険者にとって基本的なアイテムの使い方を教えることにする」


 司馬さんはそう言うと自分のアイテムボックスの中からガラス瓶に入った緑色の液体を取り出して俺に手渡した。何だろう、ポーションっぽいけど。首を傾げていると司馬さんが教えてくれた。


「ポーションは使ったことがあるか」

「あ、はい。一応はあります」


 魔力量を増やす訓練の途中に自分で作り出したポーションを使ったことがある。使用して本当に体力が回復して驚いた覚えがあるぞ。


「お前さんはエリクサーを持っているだろうが、練習に使うにはもったいないからな。そいつを使ってどうやって回復しているか見せてくれ」


 首を傾げながらも俺はまず鑑定スキルを使用してそれが本当にポーションであることを確認した。まさか司馬さんが毒物を渡すとは思えないが、一応は念のためだ。そんな俺の様子に司馬さんが苦笑いしながらも頷く。


「いい心掛けだ。俺から渡されたからといって疑いもせずに使ったら頭を叩いていたところだ」

「いろいろと勉強させてもらえましたから」


ポーションと言いつつ、毒物だった場合に苦しむのは俺だからな。我ながら荒んでいると思いながら俺はポーションを使うことにした。




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