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4-3(P28)




                     ◆◇◆◇◆◇        




藤堂晴彦の取り調べは一時間程度で問題なく終了した。別室で待たせていたシェーラ姫と共に晴彦を自宅まで送り届けた司馬はアパートの階段を下りた後に相棒の表情に気づいて苦笑した。


「なんだ、何か言いたそうだな、ワンコ」

「本当にあいつを野放しにしてよかったんですか。危険度Sクラスの∞スキルの持ち主ですよ」

「だったらなんだ。四七式の多重封印術でもかけて封印獣のように地下深くに閉じ込めるのか。まだ何も悪いことをしてないんだぞ」

「人々を守るためには仕方ないことではないでしょうか」

「力を持っているといってもアイツも守るべき一般人の一人だろう」


司馬の反論に壱美は言葉を詰まらせる。まだまだ青いなと心の中で思いながら司馬は続けた。


「あいつはあのままで大丈夫だ。奴の目を見たか。凶悪な犯罪なんかする度胸のある奴じゃない。電車で女の尻を触るのも躊躇するような小市民だぞ、多分な」

「痴漢だって犯罪ですよ」

「そういうことじゃないんだが。ならお前がアイツに痴漢してもらったらどうだ。そうすればアイツを捕まえられるぞ」

「茶化さないでください!私は…」


真剣に聞いてくれないことを怒って壱美が反論しようとした瞬間だった。突然、司馬は真剣な表情になって彼女の胸倉を掴んだ。とっさのことで壱美が絶句する。そんな彼女に凄みながら司馬は囁くように言い放った。


「あいつを敵に回した方が危険なのが分からないのか」

「…っ!!」


司馬に言われて壱美はようやく司馬の言わんとするところを理解した。今の状況では藤堂晴彦が警察の敵に回っることはないだろう。だが、悪戯に彼を刺激した場合に起こりうる被害は予想することもできない。戦術教本ではスキルSの持ち主は一国の戦術核の危険度に匹敵すると言われている。自分の仕出かそうとしていた浅はかさに気づいて壱美は顔面蒼白になった。そんな彼女の胸倉から手を離すと司馬はため息をついた。


「ナーバスになり過ぎなんだよ。あいつのステータスを見ただろう。∞スキルと言っても鑑定だぞ。鑑定。どれだけ能力を発揮しても人間を殺傷できるような力なんて覚えるスキルじゃないだろう」

「確かに…そうですね」

「まあ、今の俺たちにできるのはアイツが何か仕出かさないように定期的に見張ることだけだ。あいつのことは暫く俺に任せてくれ」


しょげる壱美の背中を司馬は乱暴に叩いた後に人懐っこい笑みを浮かべた後、パトカーに助手席に乗り込んだ。そんな司馬に釣られるように壱美も困ったような笑みを浮かべたのだった。




                    ◆◇◆◇◆◇         




一方、アパートに戻った俺とシェーラは部屋に戻るなり疲れと空腹でへたり込んだ。当たり前だ。食事も満足に食べれないような状況で取り調べを受けていたのだ。司馬さんの食べていたカツ丼は本当にうまそうだった。思い出すと余計にお腹が減ってくる。


「ハル、すぐに食べれるものはありますか」

「ああ、うん。何かあったかな」


俺は暫く冷蔵庫を物色した後にため息をついた。すぐに出せるのはキャベツくらいしかないじゃないか。流石にこれをそのまま出したらシェーラは怒るかな。怒るだろうな。自分の浅はかな考えを払拭しながら俺はメニューを考えた。

結局出したのは余ったベーコンと固形コンソメでダシを取った野菜スープだった。具は冷蔵庫に入っていたキャベツと半分になった玉ねぎをスライスして適当に放り込んだだけだ。煮込み時間が少なくてもすぐに火が通ってくれる。味見をしてみるとパンチが効いていないために粗挽きのブラックペッパーと胡椒も入れておいた。出来上がったものをシェーラと共に食べると彼女はこの味が気に入ったようで何度もお代わりをしてくれた。作った側としては作った甲斐があるというものだ。結局その日は日中の疲れもあってゆっくりと過ごしたのだった。



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