第十九話-13
帝国兵達を重力操作によって押さえつけた俺はゆっくりと辺りを見渡した。とりあえずは直ぐに襲ってきそうな奴はいないようである。それを確認した後に俺はあらためて墳墓を見上げた。凄まじい大きさだ。地球のエジプトにあるピラミッドに似た外観をしている。帝国の連中の中に地球出身の奴でもいるのだろうか。仮にいたとしても奴隷を使って墳墓を作ろうという発想の人間だとしたらあまり仲良くはなれそうにない。獣人たちが虐げられている様子を見てしまえば猶更だ。墳墓建造の人足として働かされていたのだろう。眼下に見える獣人たちは突然に空から現れた俺に驚いている様子であった。無理もないだろう。いきなり現れた人間が自分たちを虐げていた帝国兵を倒す姿を見れば目を白黒させるのも無理はない。
それにしてもどの獣人たちも満身創痍の様子である。ステータスを確認するとHPが三割を切っている上に奴隷の首輪をつけられて【従属】の呪いがかかっている。力や素早さは其処らの帝国兵など相手にならない高ステータスをしているが、逆らわないのは首輪の呪いのせいだろう。
「インフィニティ、彼らの呪いを解くことはできるか」
『詳しく見て見ないことには何とも言えません。マスター、まずはこの場を制圧した方がいいでしょう』
「そうだな。お客さんも来たようだしな」
そう言って俺は周囲を見渡した。いつの間にか俺はフードを被った男たちに囲まれていた。深々とフードを被っているためにその表情を確認することはできないが、重力操作の中で自由に動いているのを見る限り只者ではないだろう。
「何だ、お前らは」
返答の代わりに男の一人が顔をあげた。その姿に俺はぎょっとなった。男の顔は人間のものではなく、まるでSFに登場するような機械だったからだ。男は俺に向かって目のスコープを伸縮させて照準を合わせた後に容赦なくレーザーを放ってきた。尋常ではない速さだった。普通の魔法の速度を超えている。詠唱とかそういったものを全く必要としていない。
「一応聞くけどさ。ディーファスってこんなに科学技術が発達していたか」
『この世界の文明水準とは明らかにかけ離れています。ステータス確認も不明。完全にイレギュラーな存在です。用心を怠らないようにしてください』
俺達がやり取りをしている間に他のフード姿の男たちも動きを開始していた。俺を囲んだ後に奴らは一斉にレーザーを放った。クロックアップを使って上空に逃れた俺の速度に機械の男たちはついてきていた。
(早い!?)
気づいた時には俺より上の位置を取られていた。背中を思い切り叩きつけられる衝撃を感じて俺は地面に叩きつけられた。凄まじい怪力だ。これまで戦ってきた雑魚とは段違いだ。傷は【瞬間再生】によって直ぐに回復するものの衝撃で意識が飛びそうになった俺に機械兵達は容赦なくレーザーを放ってきた。
流石にこれはヤバい。
本格的に身の危険を感じた瞬間に俺の前に飛び出してきたものがいた。アリスだ。
「藤堂さんは殺させない!」
アリスはそう言って広域防御魔法である【イージスの盾】を放った。瞬時にして展開された光の盾が機械兵達の放ったレーザーを悉く弾いていく。たいした防御能力だ。
「大丈夫ですか、アニキ」
「師匠、あんな奴らに後れを取るなんて怠けていたんじゃないの?」
「お前ら…」
アリスと共にカミラとマサトシも飛び出してきていた。恐らくは物陰から俺たちの戦いの様子を見ていて我慢できなくなって飛び出してきたに違いない。
弟子たちの成長に感無量だったが感傷に浸っている余裕を与えてくれるほど相手は生易しい相手ではない。隙を見せれば先ほどのように容赦のない攻撃を食らわせてくるに決まっている。
「インフィニティ、奴らの正体は分かったか」
『先ほどの接触で解析が終了しました。彼らは勇者【藤堂晴彦】の戦闘データを元に作り出された魔導機械兵たちです。彼らはこれまでのマスターの戦闘データを元に作り出された存在です。ゆえにこれまでの攻撃パターンにある程度は対応しているようです』
道理でクロックアップが効かないと思ったらそういうカラクリか。奴らは帝国が俺に対抗する手段として生み出した藤堂ロボ彦ともいえる存在だ。だったらこれまでの戦闘データにない戦い方を見せれば対応できなくなるに違いない。
幸いなことに俺は切り札ともいえる新たな戦闘スタイルを開発済みである。それを見せる時が来たようだ。
というわけで新たな戦闘スタイルを募集中です。今回は全ての意見を採用しますので、酷いことになること間違いなしです。




