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異世界召喚されたが強制送還された俺は仕方なくやせることにした。  作者: しぐれあめ
第二部 五章 ポケットに入った大冒険豚劇!!
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第十九話-11

 メグナート森林王国首都アルナート。獣人たちの国を治めるはずの王都は獣人たちにとっての地獄と化していた。バルバトス帝国によって占領された首都では亜人狩りによって集められた多くの亜人種や獣人たちが奴隷としてある建造物を作り上げるために強制労働をさせられていた。

 帝国皇帝墳墓。帝国の皇帝が死んだときにその威光をのちの世に伝えるために建造されているピラミッド型の墳墓である。この事業を行っているのは帝国軍の宰相ケスラの直轄の配下である魔神将の一人バルガスである。バルガスは獣人を使い捨ての道具としか考えない人間であった。最低限の休息と食事しか与えないだけで無理やり働かされたせいで倒れた獣人や亜人がいたとしても彼は配下に命じて鞭を打たせた。彼のせいで多くの罪のない獣人たちが犠牲となった。

 獣人は獣の血が混じっている分、普通の人間よりも強靭な躰をしていたが、それでも休息や食事をさせられなければ死んでしまう。仲間達が倒れていく姿を見て獣人たちは歯向かいたかった。だが、捕まえられた時につけられた『奴隷の首輪』によって本来の力を封じられた彼らに勝つ術はなかった。

 ミケも仲間の獣人たちと共に墳墓で強制労働をさせられていた。彼女にとって幸運であったのは彼女が衰弱して歩けなくなる前に仲間の獣人が秘密裏に彼女を逃がしてくれたことだ。帝国兵達の裏をかいたはずだった。それでも見つかって森に逃げた時に矢で射られたのである。

 マサトシ達はその話を聞いて帝国の皇帝に対して激しい怒りを覚えた。皇帝の威光を示すためだけに獣人たちに強制労働をさせていることを一刻も早く辞めさせるべきであると感じた。





              ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇                   





 アルナート首都『帝国皇帝墳墓』。この地を統べる帝国魔神将バルガスは墳墓の完成を急がせていた。配下の兵や獣人たちにはこの巨大なピラミッド型の墳墓は帝国皇帝の威光を示すために作り上げる建造物であると伝えてある。

 だが、実のところ、この建物の役割はそうではなかった。周辺の生命たちの生命力を吸い取って集約して新たな魔神を誕生させることこそ彼らの目的であった。

 禁呪【サクリファイス】。多くの生命体知的生命体の生贄を捧げることで強大な力を引き出す邪法である。かつてゲートを開こうとする際にインフィニティが藤堂晴彦に提示して、その非人道性ゆえに却下された禁呪を帝国は使用しようとしていたのである。

 サクリファイスの生贄として使われるのは強制労働をさせられている獣人たちである。だが、そんなことを明言すれば必死になって抵抗するのは目に見えている。ゆえに真実は伝えずに獣人たちを働かせている。帝国兵とはいえ真実を知っているのはバルガスの側近たちくらいである。

墳墓の中枢に位置する部屋では帝国の魔科学者たちが装置の調整を行っていた。責任者である魔神将のバルガスはその様子を眺めながら苛立っていた。


「ケスラ様より命じられた予定より遅れているな」

「シュタリオンの影響によって元々の納期より短くされていますからね」

「言い訳はいい。装置の完成までどのくらいかかる」

「微調整を入れれば明日にも動かすことができます」

「そうか。魔神を作り上げるコアの選定はどうなっている」

「ご案内いたします」


 現場を統括する魔科学者はバルガスを別室へと案内しだした。地下へ移動する階段を下りた奥には疲れ切って項垂れた何人かの獣人たちが牢に捕らわれていた。抵抗する気力もない様子だった。


「候補を絞ってはいますが、何分はじめての事です。装置の負荷に耐えきれずに自壊する恐れもあるでしょう」

「構わん。それで死んだとしても偉大なる帝国の礎となるのだ。嘆くことなく喜んで英霊となるだろう。そうだろう、お前ら」


 バルガスはそう言って獣人たちに話しかけた。だが、それに答える者はそこにはいなかった。答える気力も失っているほどの彼らは疲れ果てていたのだ。


「ち、こちらの言葉も理解できないとは所詮は獣か」

「…おいらにしろ…」


 そういってバルガスに話しかけたのは四肢を鎖でつながれた狼科の獣人の少年であった。印象深いのは老人のように真っ白な髪と真っ赤な瞳だった。立ち上がれる体力も残っていないほど披露しているのに瞳だけはぎらついている。バルガスは方眉をあげながら興味深そうに少年を見た。


「何をするのか知らないが…やるんならまずおいらをやれ…仲間達には手を出すな」

「面白い奴だな。仲間を守るためならその身を犠牲にするというのか。ならば望み通りにしてやろう」


 バルガスはそう言ってほくそ笑んだ後にその場を後にした。白髪の少年は力尽きたのか、その場にへたり込むと、同じ牢の中にいる仲間の獣人たちが駆け寄って介抱し始めた。



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