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3-4(P21)

インフィニティさんのアナウンスによって新しくもたらされたスキルの数々に俺は驚かされた。全魔法スキルの封印解除とか無詠唱とかは何とか想像ができる。だが、限界突破とか魔力の限界突破ってなんだよ。それにインフィニティ魔法作成とか全然想像できないぞ。


『魔力の限界突破は自分の使用する魔法の元々定まっている魔力量の限界を越えて魔力をつぎ込むことができます。人間族では珍しいスキルでして主にディーファスの魔族が使用します。』

「シェーラ達の敵のスキルじゃねーか!」

『さらにご説明いたしますと限界突破はステータスの限界を越えて成長できるスキルです。こちらもディーファスの上位魔族が所有できるスキルです。』


なんてこった。思いきり悪役のスキル構成じゃねーか。インフィニティ魔法作成とか聞くのが怖くなってきたぞ。そんな俺の考えをまるで無視してインフィニティさんは自身の名前のつく魔法の説明をどこか自慢げにやり始めた。


『インフィニティ魔法作成というのは今回の新スキル習得の際の目玉スキルです。』

「随分と大袈裟なんだな。」

『大袈裟ではありませんよ。私というデバイスを有効活用することでマスターの冒険に役立つ魔法を新たに作成することができます。具体的にはこういうことをしたいという願望を明確なイメージという形で想像していただければ私が必要コストを使用して新魔法を創造します。』


なにそれ!?超凄いスキルだぞ、これは。簡単に説明してしまえばこのスキルはアラジンの魔法のランプの魔法版のようなものである。あそこに瞬間移動したいので魔法を作成してくださいと言ったり、ここにブラックホールを作成してくださいといえばインフィニティさんがその要望を鑑定スキル:∞を使用して忠実に作成してれるということだろう。それを聞いた瞬間に俺の夢と野望は広がった。頭の中では魔法を自由に使って颯爽とモンスターを倒す凄腕魔法使いの姿が映し出される。

ついに俺TUEEEの時代がやってきた。思わず緩まる頬を必死で引き締めるように努力をしたが無理だった。俺はにやけながら野望の第一歩を万能たる相棒インフィニティに告げた。


「よし、インフィニティ。手始めにディーファスへの橋渡しとなるゲートを作成できる魔法を創造してくれ。」

『条件設定。必要コスト試算。MP150000ほど消費します。使用魔力EROORが表示されました。マスターの身体MPを大きく上回ります。禁忌事項【サクリファイス】として日本人20%を犠牲にすれば可能ですが本当によろしいですか。』

「な、何言ってんの、インフィニティさん。」


恐ろしいことをさらりと言う相棒に俺はドン引きした。何だ、日本人20%の犠牲って。悪魔か。俺は。怖くてそんなことができるわけがない。そんな俺の思考を読み取ったのかインフィニティさんは冷静に告げた。


『マスターがドン引きしてくれて助かりました。私としても終末の天使達とは事を構えたくありませんでしたから。』

「なんだよ、終末の天使って。」

『かつて驕った旧人類文明を滅ぼした恐るべき熾天使達です。彼らが通った後はぺんぺん草も生えないと言われており、事実滅ぼされた星は7日7晩、滅びの黒い炎が消えなかったと言われています。禁則事項に触れれば彼らはたとえ世界の壁を越えてでもマスターを消去しに来ることでしょう。』


聞いているだけで肝が冷えてくるわ。勘弁してください。そんな怖い存在とは本当に戦いたくありません。そんなことを話していると遠くの方からパトカーの音が聞こえてきた。やばいと思った俺はシェーラを伴ってその場から離れることにした。そんな俺にインフィニティが告げる。


『ああ、そういえば言い忘れておりました。てれれれ、てっててーん。晴彦はレベルが上がりました。ちからが3上がった。素早さが2上がった。守備力が…』


逃げてるんだから頭に直接響く声でレベルアップ告げるなよ!俺は心でそう突っ込みながらシェーラの手を引きながら夜の闇に消えていった。




                 ◆◇◆◇◆◇         




サイレンを鳴らしたパトカーは公園の近くで止まってサイレン音を消した。無音でサイレンの赤い光だけが辺りを照らす中で二人の警官が現れる。一人はトレンチコートを着た壮年の男。そしてもう一人はスーツ姿の若い女だった。二人は公園の中に入ると状況を確認した。若干の火傷を負っているものが一名。倒れているものがいるものの意識を失っているだけのようだ。壮年の刑事は使い込んだガラケーによる通話でパトカーを手配した後に周囲を見渡した。そして鋭く目を細めた。その視線はどこかネコ科の肉食獣を思わせるものであった。


「強い魔力が検出されている。間違いない、奴だな。」

「噂の豚男ですね、司馬さん。」

「ああ、いい加減にこんなことを仕出かした奴を特定したい。残留魔力を持ち帰って鑑識に回してくれ。ワンコ。」

「あの、私の名前は壱美だとあれほど申し上げているのですが。いい加減に相棒の名前くらい覚えてくれませんか、司馬さん。」

「わかったわかった。」


そう言いながら男はぞんざいに手を振って詰め寄る女を追い払った。そんな二人の腕章には警察のマークと共にWMDと書かれたマークが書かれていた。



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