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異世界召喚されたが強制送還された俺は仕方なくやせることにした。  作者: しぐれあめ
第二部 三章 早くやせないと星が死んでしまう。
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第十七話-6

 晴彦がワールドイーターと対峙している頃、地球を異世界から異分子から守る組織であるWMDの本部は大パニックに陥っていた。それはそうだろう。ワールドイ―ターとは世界を丸ごと飲み込むレベルの大災厄そのものなのだから。熾天使や異世界から帰還した名だたる勇者などの精鋭による討伐隊が編成された中には当然のことながら司馬の姿もあった。

 皆が死ぬかもしれないことを覚悟して、それでも尚ワールドイーターに立ち向かおうと決意していた。

 だが、ワールドイーターは地球を襲う前にいずこかに消失した。優れた分析能力を持った者がいくら感知しようとしてもまるで他の空間にでも転移したかのように痕跡を追うのは不可能であった。ただし、地球外に設置されていた監視衛星には画像が収められていた。そこには巨大な蟲であるワールドイーターと金色に輝く雷の戦士が相対して戦う様子が映し出されていたわけである。

 司馬はその画像を見て唖然となった。その戦士のまなざしは晴彦そっくりのものであったからだ。疑念を持った司馬はその足で藤堂晴彦の元に向かうことにした。





         ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





 司馬さんがこちらに向かっていることなど露知らずに俺はその頃は自分のアパートに戻っていた。インフィニティさんと新しく飼うことになったワールドイーターの処遇をどうするべきか検討していたからである。検討の結果、【雷神覚醒】の能力を持った自分の分身体である神彦を新たに作成してワールドイーターさんの面倒を見ることにした。基本的に神彦はワールドイーターさんの面倒を見ながらゼロスペース内で暮らす。有事の際だけ本体である俺に融合して【雷神覚醒】の能力を発動するという仕組みである。

ワールドイーターさんの面倒を見ている限りは雷神に変身できないわけだが、それにも勝る効能を彼は与えてくれた。インフィニティが言うにはワールドイーターを保有している効能として彼の所有する莫大な魔力が供給されるらしく、今後は魔法を使用するのに魔力消費が全くいらなくなるのだという。

 痩せてからというもの、少しは自重しろという能力ばかりが増えている気がする。そんなことを考えていると突然脳内で何者かが語り掛けてきた。


『聞こえますか・・・藤堂晴彦、聞こえますか・・・私です・・・今あなたの心に語り掛けています・・・』


 聞いたことがない声のために誰だよと突っ込みそうになった。よくよくステータス表示を見てみると【思考補助;アカシックレコード】通話中と表示されているため、どうやら語り掛けてくれているのは異世界の神様の誰かであることが分かった。驚く俺を無視して神様は語り掛けてきた。


『良いですか藤堂晴彦・・・敵は西洋風巫女です・・・つまりイヤラシー薄絹一枚で十字架に磔けて触手(千手観音)をけしかけるのが最適解です・・・よいですね藤堂晴彦・・・期待していますよ・・・』


 何の話だ!今度こそ俺はツッコミを入れた。だが、神様は一方的に下種な話をこちらに振った後に一方的にガチャリと通話を切った。何だ、今のは。悪戯電話か。茫然としている俺に今度は別の神様が語り掛けてきた。


『聞こえるか?藤堂晴彦よ。お主に【異邦の神々の加護】を授ける。この加護は感想欄のあんな発言やこんな発言を微妙なレベルで反映するものじゃ。これは創造神(作者)の許可がなければ使えぬが、許可さえ降りれば最強(になる可能性が微レ存)じゃ。願わくば、世界に平和があらんことを…(感想がかすれていて読めない。)』


 作者って誰だよ!会ったこともないよ!!それとカッコ内は声に出して話さなくていいから!!メタな発言が多すぎてどこから突っ込もうかと思ったが、神様は再び一方的に通話を切った。少しだけ嫌な予感がしてステータスを確認すると何と【異邦の神々の加護】6221/10000が追加されていた。このポイントが増えたら何かが起きるのだろうか。ひょっとしたらいい神様なのかもしれない。

 そんなことを考えていたら再び別の何者かの声が木霊した。


『あー、もしもーし、晴彦くん聞こえてるー?加護は他の神様がもう付与したみたいだからこちらからは耳寄りなアドバイスをいっこ授けるねー。キミが修得した【肥満エネルギ―操作系スキル】ね、ソレ統合できるから。それと【名状しがたい罵声】【金切声】【物理吸収】【暴飲暴食】【帝王の晩餐】【美食家】【味覚分析】あたりも統合のタネとしてはすごく相性がいいよね、統合後のスキル予想図は・・・・おおっ!キタキタ【雷神覚醒】に続く2つ目の神覚醒スキルだ。その名も【豚神覚醒】、キミにぴったりのスキルじゃないか。イヤ俺もスキル統合しても元のスキルが消えてないのは何のバグかと思ったけど神のチョンボは気付いたヤツが骨までしゃぶるのがジャスティスってもんだから気にしなくていいよ。ザザ―…』


 ず、随分フランクな神様だなあ。最後の方になって通話が切れてしまったぞ。しかしスキルの統合とはいいことを教えてくれる神様がいたものである。インフィニティに相談したところ、神様の言葉通りに統合は可能であるという事だった。

 ならば作ってもらうのが一番だ。インフィニティにスキルの統合作業を依頼している間に何回か意識を失いかけたが、最後には無事にスキルの統合は完了したようである。ワールドイーターの魔力を使えば気絶しないで済むと思う方もいるだろうが、スキルの統合には使用者の魔力が不可欠なようであり、ワールドイーターさんの力は使えないらしい。まあ、何の努力もなしにほいほいスキルを作れたら便利すぎるよな。


『【豚神覚醒】を獲得しました。試しに使用してしますか』

「ん?ああ、すまん。寝ていたよ。よろしく頼む」


 俺が【豚神覚醒】を使用した結果、空間が激しく歪み始めた。何だかよくないものが呼び出されるような禍々しい気配が歪みの奥から這い出してくる。これはまずいのではないか、そう思った時にはすでに時遅く、グニャグニャした不確定形の何かが部屋の中に生み出された。怯える俺の前で不確定形物は次第に形を取っていった。それは掌に納まるのではないかというくらい小さな子豚であった。


「な、なんだこいつは」

『ぼくトントン』


 子豚はそう言いながら俺の掌に鼻をひくつかせてきた。何だ、随分と可愛らしいのが出てきたぞ。庇護欲を刺激する子豚だ。思わず目を細めた俺の掌に興味深く鼻を近づけてきたトントンは安心した様子ですり寄ってきた。


 うわあ、可愛い。何だ、この生物は。


 すっかり俺はトントンが気に入ってしまった。両手でトントンをすくいあげて頬ずりしていると、俺の身体から這い出してきたインフィニティが慌てながら抗議してきた。


「マスター!そいつは危険です!すぐに離してください」

「何言ってんの、こんなに可愛い生物が危険なわけがないだろう」

『ぼくトントン。わーい、ご飯がきた』


 トントンはそういうが早いか、あり得ないくらいに大口を開けた。まるで俺の身体がすっぽりと納まるくらいの大きさである。絶句する俺の目の前でインフィニティは丸かじりされた。後に残ったのはぎざぎざの歯形が残った足首だけである。足首以外はぼりぼりと子豚が咀嚼している。それはホラー以外の何者でもない。


「う、うわああああああっ!!!!!」

『ぼくトントン。あれも食べたい』


 トントンはそういうが早いか部屋の壁にその凶悪な口を向けたかと思うと丸かじりした。あっという間に部屋の壁と床の半分はなくなった。何だ、こいつは。恐怖以外の何者でもないぞ。


「トントン、無差別に食べちゃダメ!!」

『そうなの?ぼく子供だからよくわかんない。お兄さんも美味しそうだなあ♪』


 トントンはそう言って俺に向かってその凶暴な口を開いた。その歯はワニのように凶暴に尖っていた。危うく食われそうになった俺はギリギリのところで【クロックアップ】を使用してそれを躱した後に思い切り殴りつけるとトントンは気絶したようだった。怖くなった俺は慌ててアイテムボックスの中にトントンを放り込んだ後に使用禁止フォルダの中に入れて封印した。


「インフィニティ、大丈夫か」

『死ぬかと思いました。今日ほど分身体でよかったと思う事はありません』

「あれはもう封印な。二度と外に出さないようにしよう」

『イ、イエッサー』


 こうして世にも恐ろしい生物が生み出されて封印されたのだった。



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