第十七話-5
自室に戻ってからステータスを確認した俺は絶句した。見慣れたステータス画面には自重できていないステータスが表示されていたからだ。
藤堂晴彦
肥満体質【90/58】➡【58/58】
年齢:32
Lv.76
種族:人(神)
職業:真の勇者
体力:841/841➡3651
魔力:5037/5037➡10037/10037
筋力: 804➡1548
耐久: 778➡1956
器用: 250➡599
敏捷: 805➡3805
智慧: 131➡256
精神: 790➡1790
魔法耐性:778➡1600
ユニークスキル
〈ステータス確認〉
〈瞬眠〉
〈鑑定〉Lv.∞
〈アイテムボックス〉Lv.0
神威スキル
【雷神覚醒】【時間跳躍】
新規獲得スキル
【重力操作】【肥満エネルギ―蓄積】【肥満エネルギ―解放】【肥満エネルギ―転化】【世界線転移】【ゼロスペースカスタマイズ】【眷属へのスキル貸与】【眷属進化促進】【思考補助:アカシックレコード】【転職神殿解放】【武具進化】【迷宮作成】【女神の加護】【神軍降臨】【眷属】【癒しの雨雲】
スキル
【名状しがたい罵声】【金切声】【全魔法の才能】【アダルトサイト探知Lv.10】【無詠唱】【精霊王の加護】【努力家】【魔力集中】【魔力限界突破】【限界突破】【インフィニティ魔法作成】【電撃吸収】【神速】【二回行動】【思考加速】【地形効果無視】【オーバードライブ】【クロックアップ】【孤狼流剣術:初級】【物理吸収】【暴飲暴食】【倍返し】【魔剣召喚】【帝王の晩餐】【美食家】【味覚分析】【オーバーリアクション】【魔力感知】【ルーン魔術作成】【グングニル召喚】【空間魔力制御】【快適空間作成】【千手観音】【高速飛行※】【カリスマ】【聖者の行進】【ニコポ】【リア充爆発】【御神体モード】【ガリバースペース】【分身体作成】【剛力】【金剛体】【超弾道】【脊髄反射】【スタミナ即回復】【硬気術】【フィールドの覇者】【鬼神化】【ブラックウインドウ】
(インフィニティ魔法)
【魔法障壁:絶】【Dボム作成】【回復薬【最上質】作成】【焔の蛇】【酒雲作成】【強制終了】
人間離れしたステータスにも唖然となったがスキルも自重しろと言わんばかりの量になっている。いくつか抜けているような気もするが、インフィニティの事だから忘れているのかもしれない。新規獲得スキルの中でも時間跳躍というものが気になった俺はインフィニティにスキルの鑑定を依頼した。暫く分析した後に帰ってきた回答は驚くべきものだった。
『えーと、こんなの普通の人間が持っていていいのかな…』
「どういうことだ」
『いや、私もかなり戸惑っているのですが、どうやら時間跳躍は過ぎ去った時間に戻ってやり直すスキルのようです。ただし、歴史の大きな流れに改変を行うと戻ってきた歴史が変わってしまう可能性がありますので気軽に使うのはやめたほうがよろしいかと思われます』
「マジかよ。今回のスキルは不穏なものが多すぎる気がするんだが。【世界線転移】とかどういうスキルだよ」
『世界線転移は今いる歴史と違う歴史を歩んだ世界線の自分と意識が入れ替わるスキルです』
「よく分からないんだが」
『例えばマスターが車に轢かれそうな猫を助けなかった選択肢をしたとします。そこではディーファスに召喚された後に起こるはずの歴史は全てなかったことになります。その世界線のマスターは恐らくはいまだ引きこもり生活を続けています。世界線転移はそういったもう一つの可能性に介入するスキルです。ですが、迂闊に使わない方がいいと思われます』
「何故だ?」
『リスクが高すぎるからです。仮にディーファスへの転移のゲートを開くためにサクリファイスを使用したマスターがいる世界線があったとしたら、人の命をどうとも思わない凄まじい悪魔になっているマスターと入れ替わる可能性があるからです。そんな人間と入れ替わったらこちらの世界線も滅茶苦茶にされますよ』
そう言われて想像したらゾッとした。見た目はそっくりだが悪逆非道を行う藤堂晴彦。そんな奴が野放しになったとしたら危険どころの騒ぎでない。冷や汗を流しながらも余程の事態が起こらないと使うのはやめようと決意した。
そんなことを考えていたら、ふいに俺の全身に鳥肌が立った。同時に髪の毛が静電気を浴びた時のように逆立ったような不可思議な感触を覚えた。おかしいと思って両手を見てみると金色に発光していた。何が起こっているんだ。
『マスター!地球付近に敵が現れました!恐らくはマスターを狙っています。防御本能で自動的に【雷神覚醒】の能力が発動した模様です』
「ちょっと待て、敵ってなんだよ。まさか魔神獣か?」
『それが…この生物は…ワールドイーターです』
「ワールドイーターってあの魔法力を喰らいに来る噂の化け物か。マジかよ」
与太話に過ぎないと思っていた生物が地球に向かっているというのか。俺は顔面蒼白になった。だが、インフィニティはこともなげに言った。
『マスタ―、ちょうどいいですからぶっ倒しに行きましょう』
「何言ってるの、インフィニティさん」
ついにAIがぶっ壊れたのか。惑星を喰らうような化け物に人間様が勝てるわけがないだろう。そう反論した俺にインフィニティは自信を持って答えた。
『今のマスターは神の能力を持っています。大丈夫です』
「いや、そう言われてもな」
尚も俺は行くのを渋ったが、脳内でインフィニティがぎゃあぎゃあと騒ぎ出したので仕方なく外へ出た。神の力の影響なのか、念じるだけで空を飛ぶことができた。
「地球の外ってことは空気がないんじゃないのか」
『神様に空気は必要ありませんよ』
「本当だろうな」
そう思いながら俺は天に向かって飛翔した。一瞬にして真っ暗な闇の中に移動したことに冷や汗が出た。ここはどこだよ。と思ったら妙に顔の前が熱い上に眩しい。何かと思って見てみると目の前に燃え盛る巨大な恒星の姿があった。あれはまさか太陽か。危うく突っ込むところになって慌てて俺は急ブレーキをかけた。
『どうやら行き過ぎたようですね』
「行き過ぎだ!もう少しで火だるまになるところだったぞ」
『力を制御するためにイメージをもう少し行ってください。敵の気配を掴むんです』
「なるほど、そういうことならば…」
俺は額に指を当てながらワールドイーターの気配を探した。地球らしき気配の近くにバカでかい強大な気配が現れつつある。これがワールドイーターなのか。気配を掴んだ俺はそれに向かって移動を開始した。
宇宙空間に浮かんでいたのは惑星以上の大きさをした巨大な蟲のような生物だった。その巨大な口は地球をすっぽりと包み込むほどのもので、見るものに生理的な恐怖を与えた。
ワールドイーターは俺の姿を見つけるなり、その巨体をうねらせながら攻撃を仕掛けてきた。反応するかのように俺は全身から雷撃を放った。一度放って分かった。これは普通の雷ではない。まるで自分の魂をそのままぶつけるような力を秘めた雷だ。ワールドイーターは雷を喰らって体が蠢いているもののダメージを喰らっているというよりは喜んでいる様子だ。何だ、こいつは。そう思っている俺の脳内で何者かが語り掛けた。
『…モット、モットチョウダイ』
「なんだと、お前は誰なんだ」
『ボクハクラウモノ。タイコノムカシニソウゾウシンニヨッテウミダサレタ』
「お前はワールドイーターなのか。俺の魔力を狙って地球を喰らいにきたんじゃないのか」
『ソンナツモリハナイ。ボクハイツモココチヨイマリョクヲサガシテイルダケ。デモホシゴトタベテシマウ』
「なんでそんなことをするんだ」
『ソウシナイトオナカガヘッテシンデシマウカラ。デモキミノチカラガモラエルナラモウオナカガヘラナクテスム』
ワールドイーターはそう言って攻撃するでもなく、体を摺り寄せてきた。どうやら俺の雷に餌付けされたようだった。こんなでかい生物をどうすればいいんだよ。困り果てた俺にインフィニティが語り掛けてきた。
『懐かれたみたいですね。ゼロスペースで飼われてはいかがですか』
「また天使に狙われそうなんだが」
『大丈夫ですよ、天使は神に仕えているんですから』
インフィニティはそう言って【女神の加護】を使って地球の管理神と交信をし始めた。責任を持って飼うなら天使たちは説得しておくという事だった。簡単に決めるなよ。犬や猫じゃないんだから。
こうしてゼロスペースの中に収納されたワールドイーター専用の巨大空間が作られたのだった。