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3-3(P20)

 俺は気を取り直してシェーラから少し離れたところに位置を取ると慣れた数週間続けた左腰に掌サイズの玉を抱えるような例の構えを取った後に精神集中を行った。気のせいだろうか、空気が振動しているような気がする。頭の中で光の玉が凝縮して広がっていくイメージを行って、それが掌からあふれ出そうとした瞬間に俺はそれを正面に放った。勿論、実際にエネルギーの弾が構成されているわけではないので何も起きない。だが、俺には不思議とあと一回同じことを行えばエネルギー波が起こるイメージが沸いていた。大丈夫だ、あと一回やってみれば上手くいく。


「おい、なんだよ、変なことをやっているデブがいるぜ!!」


 そんな俺たちに急に後ろから声がかかった。びっくりして振り返ると数人の柄の悪い男たちがこちらに向かって歩いてきていた。不味い。急いでここから立ち去るべきだと思いながらも動くことができなかった。駄目だ、完全に足がすくんでしまっている。

 俺とシェーラが逃げることができないうちに男たちはシェーラを羽交い絞めにした。


「変な髪の色をしたねーちゃんだな。あんな豚野郎と絡んでないで向こうで俺たちと遊ぼうぜ」

「ぶ、無礼な!離しなさい!」

「英語かよ、何言ってんのか分かんねえよ、日本来たなら日本語を話しな!」

「オウマイゴー、キスマイアース!なんつってな、ぎゃははははっ!」


 そう言いながら男たちはシェーラの身体のあちこちを触りながらニヤニヤしたいやらしい笑みを浮かべた。堪らなくなって俺は奴らを止めようと駆け寄っていった。


「やめろおおおおっ!!!」


 だが、俺が拳を振りかざして殴りかかろうとする前にリーダー格と思われる金髪男の膝が深々と俺の腹にめり込んでいた。何だ、これ、めちゃくちゃ痛いぞ。痛みで悶絶してその場で崩れ落ちる俺の頭を金髪男は容赦なく掴みあげる。


「良い子はもうねんねの時間でちゅよ、子豚ちゃ~ん」

「馬鹿じゃねえの、てめえみたいなデブが俺たちに勝てるわけがねえだろう!」

「気持ちの悪い顔しやがって、てめえみたいな豚野郎は一生家から来ずに引きこもってママのおっぱいでもしゃぶってやがれ」


 男たちの罵声が圧迫面接や引きこもって社会に出れなくなった俺に対する友人達の罵声と重なっていく。その言葉のナイフに俺の心は容赦なく折れそうになる。そうだよ、所詮、俺は社会に出てはいけない豚野郎なんだ。みんな俺のことを気持ちが悪いという。、だから俺なんて一生引きこもっているべきなんだ。そう思いながら俺の意識は薄れていった。


「ハルッ!助けてください!」


バカヤロウッ!寝てたら駄目だ!


 シェーラの声に俺の意識は一瞬にして覚醒した。俺のことはいくらでも馬鹿にするがいい、だが、俺は大事なことを忘れていた。俺にはシェーラがいる。彼女を守らないといけないのだ!

 だが、殴り合いではまず勝てない。だから俺は今できる最善策で奴らに挑むことにした。俺はまず殴った金髪の足をがっちりと掴むとインフィニティに命令した。


「インフィニティ、鑑定スキル:インフィニティを発動しろ。目標対象は足元の大地。年代を遡る鑑定状況をカラー画像による高速イメージで逆再生させていけ。」

『了解、これよりサイコメトリングを開始します。』


 瞬間、金髪と俺の周囲の景色が高速で切り替わっていく。夜から昼、昼から夜、無数の人々が訪れて去っていく。さらに周囲の景色は完成された公園が逆に徐々に解体されて空き地に変わっていく。そしてそれは次に焼け野原になった。そして徐々に消えていた炎が蘇っていく。焼けただれる周囲の景色の中では多くの人々が焼かれていた。上空には轟音を上げて空爆を行う飛行機が飛んでいる。その様はまさしく地獄絵図だった。そのイメージの強烈さに思わず金髪が恐怖の声をあげる。俺はそこで景色の高速逆再生を再生に切り替えた。金髪の男の目の前で焼けただれた男がもがき苦しむ。


「来るなッ!くるんじゃねえ、化け物どもが!!」


 無論、これはすでに起こったことだ。だが、金髪の目の前の記録画像は現実にしか思えないほどリアルなものであった。金髪男は俺の手を振り払うと一目散に逃げていった。同時に俺の周囲の景色が元に戻る。


「かっちゃん!どこいくんだよ!」

「かっちゃんは怖くなったから帰るってさ」


 俺はゆっくりと立ち上がりながらシェーラを拘束するチンピラどもを睨みつけた。まずは一人。次はどいつだ。そう思っているとシェーラを羽交い絞めにしていた男が急に悲鳴をあげた。見ると男の服の袖が燃えている。おそらくはシェーラが火炎魔法を最低出力で放ったのだろう。流石だ。男が慌てて地面に転がりながら腕の火を消している間に俺は残った男に狙いを定めて構えを取った。放つイメージは敵を吹っ飛ばす威力のエネルギーの塊。これまではごっこ遊びだったが、今の俺にはそのごっこ遊びが現実になる不思議な確信があった。

 両の掌にエネルギーが集まっていく。それが掌からあふれ出そうとした瞬間に俺はそれを放った。可視化された光の塊は男目がけて高速で真っすぐに飛んでいくとその懐に大きく食い込み、男を空へ舞いあげた。3メートルほど宙に舞った後に男はゆっくりと地面に落ちて意識を失った。俺は茫然と自分が今したことが現実に思えずに掌を見た。そんな俺の脳内でどこか嬉しそうなインフィニティさんがアナウンスしてくれた。


『経験値の蓄積により【魔法の才能の欠如】スキルは限界突破しました。マイナススキルの克服により【魔法の才能の欠如】は消失。【全魔法】スキルの封印を解除。新たに【無詠唱】【精霊王の加護】【努力家】【魔力集中】【魔力限界突破】【限界突破】【インフィニティ魔法作成】を習得しました。』




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