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第十五話-12

 インフィニティにブタノ助の修行を任せたものの、何となく嫌な予感がした俺は奴にバレないように物陰から見守ることにした。とは言っても側で見ていたらバレる恐れがある。そう思った俺はラードナーの元に赴いて遠視の水晶球を借りることにした。

 水晶球を借りて自室で映し出した光景ではすでにインフィニティによる訓練が始まっていた。ブタノ助だけでなく、仲間モンスターであるゴブえもんや紅カブトまで連れてきている点がまずは評価できた。前回の反省は仲間にしたモンスターを鍛えなかったことだからな。ちゃんと俺が反省していたことを脳内で読み取っていたのだろう。ブタノ助はともかく、残りの二匹は連れてこられたことに困惑している様子だった。

 そんな二頭の足元にいきなりインフィニティはどこからともなく取り出した鞭を振った。おい!猛獣使いか、お前は。


「いいか!貴様ら!私は偉大なるマスター晴彦から貴様らをパワーアップさせることを命じられた!私の質問に対して貴様らに許されるのは『イエス、サー』という答えしかない!分かったか!」

「い、いえす、さー」

「がうう?」

「ゴブゴブ!?ゴブゴブゴブ!!!」

「返事はどうした!!ケダモノどもが!」


 いう通りに応えなかった二匹に対してインフィニティは千手観音を使って手を自在に伸ばすと二匹の喉元を掴んだ。同時に高圧電流が流し出される。体が透けて骨が見えるくらい強力な電流だ。明らかにやり過ぎではないだろうか。


「しびびびびび!!」

「がううううう!!!?」


 横で見ていたブタノ助も真っ青だ。電撃を喰らってぐったりした二匹にインフィニティは回復魔法をかけた。飴と鞭とでもいうつもりか。


「あ、あの、教官殿、よろしいですか」

「質問を許す、なんだ」

「パワーアップとはどのように行うのですか」

「簡単な話だ、貴様ら全員に千手観音を身につけさせる。そのためにこれを用意した」


 そう言ってインフィニティが準備したのは不気味に脈動する肉片だった。あまりに不気味なその姿にブタノ助が後ずさる。


「それはなんですか、教官殿」

「これはな、偉大なるマスターの身体から生みだした『肉の芽』だ。これを喰らえば誰でも千手観音になることができる」


 あの馬鹿、そんな危険なものを開発していたのか。俺は慌てて椅子から立ち上がると暴挙を止めるためにインフィニティのいる訓練場に急いだ。


 だが、すでに手遅れだった。訓練場は阿鼻叫喚の地獄と化していた。沢山の手の生えた肉の塊が三つ仲良く並んでビクンビクンと痙攣して横たわっている傍らではインフィニティが変わり果てた三匹の様子に戸惑っていた。俺の姿を見るなり、悪戯が見つかった子供のように肉の塊を隠そうとしていた。悪いが、そんなことで隠すことができるほど生易しいものではない。


「これは一体どういうことだ」

「マスタ―、違うんです、悪いのは全部これなんです」

「そんなにいいものならお前が食え」


 俺はインフィニティが差し出した肉の芽とやらを奪い取ると奴の口の中に無理やり押し込んでやった。瞬間、奴の身体の内側から夥しい手が生えてきた。即効性にも程がある。


「おぶ!おぎゃああ!なにこれ、制御できない!!ぎにゃああああ!!腕が、腕があああ!!!」

「お前に任せた俺が馬鹿だったよ」


 尚も生え続ける謎の腕を眺めながら、この大惨事をどの様にまとめるか俺は頭を抱えた。





             ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇              





 暫くして元の姿に戻ったインフィニティを正座させると俺はお説教を開始した。あまりにも頭が痛かったので今後の強化計画をどの様に行うのかを聞いてみた。

 思った以上に酷いものだった。インフィニティの計画はこうだ。まずは肉の芽を体に馴染ませて自由に発動できるようになった後は、時間が止まったゼロスペースで生かさず殺さずの修行を一年間くらい行わせる。最終的には動くものを見つけたら容赦なく殺すキリングマシーンに仕立てるつもりだったという。

何を情報ソースにしたのか尋ねると案の定、俺が所有していた漫画から得た知識だった。

 インフィニティにとって予想外だったのは肉の芽の発芽速度が作成者でも制御しきれないほどの速さだったことだ。自分に使われたことでその恐ろしさを実感したらしい。

 本人曰く二度と肉の芽は作りたくはないそうだ。被害者になってから気づくなよ、そう思いはしたが、三匹の体から肉の芽を除去させることを約束させてその場は納めることにした。



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