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14-10(P161)




                 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇        





 騎士たちを捕縛いした後に村に戻ると門番をしていたワーウルフに止められた。どうやら一緒に仲間モンスターの軍団を連れて行ってしまったのが問題だったようだ。森の中でも凶暴なモンスターに位置するビッグベアやブラックハウンドを手下にして連れてきている上にその他の森の仲間達もぞろぞろと入ってこられては村人たちが怯えると言われてしまっては納得するしかなかった。俺はブタノ助に命じて側近であるビッグベア以外の仲間たちにはいったんは村の周辺で通常の生活に戻るように伝えた。村の有事の際には全員集合するように伝えると動物たちは神妙な顔で頷いた後に方々へ散っていった。

 若干、ワーウルフがどっと疲れたような顔をしているが、どうかしたのだろうか。見た目は怖いが、気のいい連中だぞ。そんなことを思いながらも捕虜を連れて村に入り込むと、気のせいか皆が殺気立った表情でこちらを見ているのが分かった。

 何か悪いことをしただろうかとブタノ助に尋ねると、どうやらそうではなく殺気立っているのは捕虜にした帝国の騎士たちに対するものだということだった。

 言わるまで失念していた。確かにこの村の亜人達にとって彼らは家族や仲間を殺した憎い相手そのものなのだ。安易に連れてきたのは間違いだったかもしれない。

放置していたら捕虜を殺してしまう恐れがあるが、俺たちの護衛として佇んでいるビッグベアがいるせいで手出しができないようである。

 俺はブタノ助に命じて皆を集めると説明をさせた。こいつらを殺すのは簡単だ。だが、それをやってしまえば俺達もこいつらと同じ鬼畜になるぞ、と。村人たちはそれでも納得しきれていない様子だったが、こいつらを殺しても殺された仲間たちは残念だが、帰ってこない。加えて一度相手を殺せばそれに慣れてしまい、人間を殺すことに躊躇いがなくなるに違いない。

 そうなってしまっては帝国を追い払っても亜人と人間は共存できなくなる。そう考えた俺は村人を追い払わせると騎士たちを村の奥にある牢へと放り込んだ。一応の見張りのためにビッグベア四天王の一人黒カブトに牢の中に入ってもらっておかしな真似をしないように監視してもらうことにした。騎士たちは熊と一緒に入れられるとは思っていなかったらしく、恐慌状態になったが、これまでしてきたことを考えると生かされているだけでもありがたいと思うべきである。出してくれと言われても聞く気などない。

騎士たちを牢に入れた後に俺は次にどうするかの計画を立てることにした。森の仲間は増えたが、敵の戦力というものが分からない以上、迂闊に城に攻め込むのは危険だろう。かといってこのまま投獄されている国王を放置しておくわけにもいかない。

 まずは国王を救出することを考えよう。問題はどうやって城の中に入り込むかである。霊体の状態で偵察に行こうかとも考えたのだが、何かの力が働いてか抜け出ることができなかった。さてと、困ったぞ。どうするべきか悩んでいると脳内で懐かしい声が聞こえてきた。


『マスタ―…ザザ…、マスター…、聞こえ……』


 この声はインフィニティだ。不安定な状況だが、向こうの世界との通信が繫がったようである。


『…シェーラ姫…伝言…シュタリオン…ザザ…近郊…洞窟…城の地下に繫がる…抜け道…』


 それが聞こえた後に通信は再びプツンと途絶えた。今の話を整理するとシュタリオン近郊に地下に繫がる洞窟があるという事になる。次の目的地が決まったな。俺はブタノ助に洞窟を潜り抜けて国王様を救う手はずを整えるように命じた。





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


            


 

 村人たちにも話を聞いてみたところ、確かにシュタリオンの近郊の丘にはどこに繋がっているか分からない洞窟があるらしい。ただし、その洞窟は凶暴な魔獣が棲みついており、とてもじゃないが人が入り込めるところではないのだという。そこに行くつもりだと話すと正気の沙汰ではないと止められた。危険は百も承知だ。

 俺は休息を取ってから仲間達と共に洞窟に向かうことを告げた。

 ブタノ助とゴブえもんは若干どころか凄く嫌がっていたが、いちいち聞いていたらきりがないので敢えて文句は聞かないことにする。一応は護衛としてビッグベアの紅カブトを伴うことで無理やり納得させた後に洞窟に向かうことにした。





                ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇         





 シュタリオン城から離れた丘の上にある洞窟は『いにしえの洞窟』と呼ばれる古くからあるダンジョンである。古代文明の後だとも言われているこの洞窟には数多くの魔法具が眠っているという言い伝えが残されている。だが、いつしか洞窟に凶暴な魔獣が棲みつくようになってしまい、今では冒険者ですら敬遠するような場所になってしまった。

 そんな場所の前にそれがしは立っていた。神様の命令とはいえものすごく怖い。困った時には助けると言われているが、それがしの仲間がこれまた不安を助長させる連中である。気のいい奴だが、うっかりもののゴブえもんとコミュニケーションすらきちんと取れているのか分からないビッグベアの紅カブト。本当は村の戦士たちにも協力してほしかったのだが、皆が行き先を聞いた瞬間にまだ死にたくないと首を横に振った。要するにこれから行こうという場所はそういう場所なのである。

それがしと違ってゴブえもんと紅カブトはテンションが素晴らしく上がった状態である。紅カブトはどうか知らないが、ゴブえもんはここがどういう場所なのか分かっていないのではないだろうか。先陣を切って洞窟に入る気満々である。

 そんなわけでゴブえもん、それがし、殿に紅カブトといった隊列で岩肌の洞窟の中に入っていった。

洞窟に入ってすぐに罠を起動させたのはゴブえもんだった。警戒するということを知らないゴブえもんは躊躇いもなく色違いの床を踏み抜いた。あっと言う暇もなく、横の壁からそれがしの鼻先ギリギリに矢がひゅんと通り過ぎて行った。もう少し位置が違っていたら鼻に刺さっている。


「ご、ゴブえもん、もう少し気をつけて歩いてくれないか」

「ゴブゴブ!」


 ゴブえもんはコクコク頷いた後に周囲を警戒しながら歩き出した。周囲を気にするものの足元を全く見ていない。先ほどスイッチを踏んだばかりなのに学習能力というものはないのだろうか。


『大丈夫なのか、あいつは』


 神様も心配そうに言うのだが、恐らくは大丈夫ではない。ゴブえもんがやる気を出している時はたいてい恐ろしいことが起きるのだ。それがしは足元に注意するようにゴブえもんに伝えた。それがいけなかったのだと思う。足元しか気にしなくなったゴブえもんは突き当りの部屋に宝箱が置いてあるのを発見するなり警戒もなく近づいていった。

 まずいと思ったそれがしが止める間もなく、ゴブえもんは勢いよく宝箱を開けた。瞬間、テレポーターが発動して、それがしたちはその場から転移した。

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