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14-9(P160)




               ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇        





 普通のモンスターより凶暴なオークが出現したために敗走した。報告を受けた黒騎士団の団長は命からがら逃げてきた部下から報告を聞くなり、激怒して腰の剣を抜き放った。鮮血が舞い散り、部下の首が宙に舞った後に床に転がる。いきなり殺されるとは思っていなかったのか、その死に顔は信じられないといった表情をしていた。血油が付いた刀身を布で拭いながら団長は叫んだ。


「誇り高き帝国には逃げ帰るような臆病者は必要ない!!」


 その光景を横目で見ながらシュタリオン自治領主であるフッテントルクは震え上がった。大臣という立場にありながら彼は自国を裏切って帝国側についた人間である。元来の打算的な性格で盟主であるシュタリオン王を裏切った彼はその見返りとして現在の立場を獲得したのだ。

 黒騎士団の団長はそんな彼の監視役として帝国本土から派遣されてきた人間なのである。本当は帝国の目など気にせずに贅沢三昧をしたいのであるが、監視役がいる以上は勝手なこともできない。その上、目の前であのような残虐行為を見せられてしまっては肝が冷えてしまってしょうがない。

 そんな自治領主を横目で一瞥した後に黒騎士団長は叫んだ。


「50騎の兵を送れ!そのオークの首を持ち帰らない限りは帰還することを許さん!!奴らを皆殺しにして人間の強さを知らしめるのだ!!」


 騎士団長の言葉に騎士たちは平伏した後に慌てて部屋から出ていった。部下達の様子を忌々しそうに睨んだ後に黒騎士団長はフッテントルクに話しかけた。


「フッテントルク殿、シュタリオン王女の行方はまだ見つからないのですか」

「申し訳ありません、方々の手を尽くしてはいるのですが」

「あまり時間があるとは考えない方がいいですぞ、皇帝陛下の慈悲にも限りがありますからな、貴方も前国王のように牢に放り込まれたくはありますまい」


 そう囁いた後に黒騎士団長は冷や汗まみれのフッテントルクを置いてその場から去っていった。





                ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇         





 騎士団長から命令を受けた黒騎士団は兵装を整えた後、闇の中で馬を走らせた。漆黒の闇の中にたいまつを持った騎兵たちが駆け抜けていく様子は不気味なものであった。

 彼らは森まで続く草原を駆け抜けた後に森の入り口までたどり着いた。遠くの方から狼の遠吠えが木霊する。

 本来であれば夜の森には普通の人間は入ろうとしない。夜行性のモンスターの動きが活性化するために昼間の森よりも危険が伴うからだ。だが、怒り狂う騎士団長を待たせることは自分たちの死に直結する。さっさと終わらせるのが一番だ。甲冑を身に纏った騎士たちはそう思いながら馬を森の中に進ませた。暫く進んだ所で騎士たちは異様な振動が大地から伝わってくるのに気付いた。それは何かがこちらに向かって進んでくる足音のようであった。

 地響きのごとき足音は次第に轟音をあげて近づいてきている様子だった。

 ふいに凄まじい咆哮が森中に響き渡った。普通の獣のものとは思えないほど悍ましい叫びだった。騎士たちはすくみ上がりそうになったが、何とか堪えた。だが、彼らの騎乗している馬たちはそうはいかなかった。

 身の危険を感じた馬たちは怯えて荒れ狂うと騎乗している騎士たちを振り落として逃げ去ろうとしたのだ。何人の騎士が馬から振り落とされて地上に落下すると自由になった馬たちは一目散に逃げ去っていった。黒騎士兵を率いていた騎士は周囲の騎士に剣を抜くように命じた。何かは分からないが敵が来る。


「前方から敵が来るぞ、警戒を怠るな!」


 そう叫んで眼前の闇に向かって剣を突き付けた。その先に見えるのは暗闇の中で光る夥しい数の獣の目だった。10や20どころの騒ぎではない。100匹以上はいる。それを見た瞬間に騎士は血の気が引いていくのを感じた。野生のモンスターが軍勢など率いるなど聞いたことがなかったからだ。そんなことができるのは人類の敵の魔王軍くらいしか聞いたことがない。

 獣たちは騎士たちに全く怯えることなく突き進んできた。その集団の戦闘にいるのは巨大な熊に乗った一匹のオークだった。彼は騎士たちに怯むことなく槍を突きあげながら背後のモンスターたちを鼓舞するように叫ぶと騎士たち目がけて迫ってきた。ブタの後ろを数えきれないモンスターの大群が追う。その勢いを騎士たちは止めることすらできなかった。圧倒的な勢いのまま、迫ったモンスターの大群は騎士たちを押しつぶすように蹂躙していった。






              ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇              




 あっという間に戦闘が終わってしまった。せっかく警戒して仲間を集めたというのに呆気ないものだ。我ながら凄まじい勢いだったと言える。

 モンスターパレードとでも名付けようか。この異様な突進力の秘密はビッグベアの騎兵部隊によるものだ。ビッグベアの高い装甲と突進力に目をつけた俺は紅カブト以外も生息していたビッグベアを手なずけてオリジナルの騎兵部隊を作り上げた。彼らの突進力は重戦車並みだ。

 それ以外にも出会うモンスターをかたっぱしから手懐けていった結果、騎兵をも一瞬で蹂躙する化け物部隊が誕生したのだ。本当はビッグイーグル部隊も作りたかったのだが、時間の関係で間に合わなかった。押し潰されたものの、かろうじて息のある騎士たちを助け起こすと身ぐるみを剥いでいった。武装はモンスターたちのために使用し、彼ら自身は村に連れて行って捕虜にする。牢に入れるつもりだが、反乱する可能性もあるからビッグベアに一緒に入ってもらって牢内の見張りをさせた方がいいだろう。

 騎士たちを蹂躙したことで戦えることを確認した俺たちは勝利の雄たけびをあげた。動物たちの高揚する叫びが森中に響き渡った。


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