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皆さん、いいアイデアをありがとうございます。今回の感想は感謝の形として一部抜粋させていただいています。
異世界に渡る方法を悩んでいるとインフィニティは素晴らしく明るい声で提案してきた。
『マスター、アカシックレコードを使用して異世界の神々から神託を頂きましょう』
「アカシックレコード?」
聞き慣れない単語に俺は怪訝な顔をした。そんな俺の表情を察してかインフィニティは自信ありげな表情で俺にステータス画面を開くように命じた。メニュー画面の項目の中にアカシックレコードへ行くと書いてある項目が付け足されていた。若干、いやな予感がしながらも勧められるままに俺はその項目をクリックした。瞬間、俺は不可思議な空間に転移していた。
そこは凄まじい数の本が立ち並ぶ空間だった。一見普通の図書館のようにも見えたが、怖いのは空間の奥行きに終わりが見えないところだ。全く果てしない空間だ。上を見上げても天井が見えない。
「一体どこなんだ、ここは」
『ここはアカシックレコード。様々な時空の中で起こっている記録が書かれている世界です』
インフィニティはその本棚から一冊の本を取り出した。それは『異世界召喚されたが強制送還された俺は仕方なく痩せることにした。』と長すぎるタイトルが書かれたハードカバーの本だった。一体何だというのか。
『これはマスターのこれまでの物語です』
「俺の物語?」
『そうです、これまでのマスターの行動がアカシックレコード内では一冊の本となっているのです。マスターだけではなく、この本棚にある本の一つ一つが様々な並列宇宙に存在する人物たちの記録なのです』
驚いた俺は本を開いてページをめくってみた。確かにこれまでの行動が要約された物語になりながら描かれている。だが、ある一定の頁までめくると白紙の状態になっていた。
「どういうことだ、白紙だぞ」
『それはマスターの物語はまだ終わっていないという事です。確定していない未来の出来事までは描かれていませんから』
「そういうものなのか」
何だか釈然としなかったが、俺は本を閉じた。同時に何かの声が頭の中に響いてきた。それは様々な人間の声だった。
【…神様転身系…協力を仰ぎ…召喚時間…伸ばし…現地の物を食べまくり…その世界の物…構成された身体…召喚システム…騙す…いかに肥らせられるか…】
【…インフィニティ…勇者に仕立て上げ…収納を経由…勇者由来の強制送還…は発生しない…】
【…オイリー…ビッグな晴彦…ナイスな解決法…思いつく…仲間…たすけてくれる…】
【インフィニティ…異世界に送り込む…インフィニティ…一人でできるもん…若干世間知らず…異世界で大立ち回り…】
【…オーク等…異世界転生…豚は半年程で体重が100㌔程…】
【…オークに憑依…変化…インフィニティさん…おまかせ…王様直接…ネズミ…スキル付与…丸投げ…】
【…分裂スキルを習得…大きさが半分…目標体重も半分…密度を半分…】
【シェーラをこっちに引っ張り込めた…一瞬でも向こうに…王様も回収…】
【…スキルの組み合わせ次第では時間が伸ばせる…再度異世界…限界突破…王道展開…作品的には憑依系…地球…メンバー…空気…】
【…分身のスキル……二体でひとつみたいな扱い…こっちにいる豚とあっちにいく豚…半分に切り離し…無問題…】
【…今から子作り…異世界因子持った勇者…じいちゃん救出…青い髪派は排斥…】
【…形代…憑依からの異世界越え…ポンコツさん…現実世界…晴彦がんば…】
【…かわいいデブ姫との絡み…ほぼ皆無…そろそろ原点回帰…外科的手段…ダイエット…脂肪吸引…両手両足もいじゃう…】
【…異世界の転移ゲートが開く条件…人間の成人男性であること…一切示されてない…野生のイボイノシシのオスの成体の標準体重…95~100キロ程度…】
【…簡単な話…脂肪吸引…使えば使うほど体重が減るリスク…スキル…】
【…自力…星々の宇宙…走って到着…方法…模索…】
【…異世界…精神のみ転移…オーク…豚転生…凄い洒落…面白い…勿論精神のみ…】
【…該当する世界…活動出来る…ナニカ…探査機…分身の術…如何にかする…】
【…簡単…手足切り取っちゃえば…帰ってきて…また付ければ無問題…それ位出来…】
【…精神のみ異世界…飛ばして憑依…インフィニティを分離…ゼロスペースからハルヒコの体を取り出す…物体として…ハルヒコの体…インフィニティ…操作】
一瞬にして流れ出した凄まじい情報量に頭がパンクしそうになった俺は慌てて本を棚に戻した。オークに憑依とか分身の術とか一体何なんだ、今のは。動揺する俺にインフィニティが語り掛けてきた。
『今のはこの本を媒介にマスターの行動を見守っている異世界の神々達です』
「今のが神様の声なのか、どう考えても人間の声にしか聞こえなかったが」
『ほら、お客様は神様だって言いますしね。でも本物の神様ですよ。その気になったら神様たちは世界を滅ぼすこともできるんですから』
確かにあの声は人間では考え付かないような方法を簡単に言ってのけていた。一番戦慄したのは両手足をもいで体重を減らすとかだ。あいにくと俺の身体はレゴブロックではない。何かとお間違えではないのだろうか。子作りも色々と問題あるので無理です、神様。
それからインフィニティさんのみを送り込むのだけは避けた方がいいと思う。嫌な予感しかしないから。
『最有力は手足をもぐかイボイノシシのオスを依り代にする、でしょうか』
「言うと思ったよ、こんちくしょう!」
絶対こいつは面白くなる基準で選んでいるに違いない。そうはさせまいと息巻く俺にインフィニティは告げた。
『一番あり得るのは分身か憑依ですね。問題はゲートを潜れるかどうかですが』
「ゲートってのはこちらから呼び出せるのか」
『シェーラ姫の協力が必要ですね』
「分かった、まずはシェーラと話そう」
シェーラと話をすることに決めた俺はアカシックレコードから出ることにした。出る前に一瞬だけ振り返った。再びここに来ることがあるのかは分からない。
神様たち、ありがとうございます。
心の中で礼を言った後に俺は元の空間に戻った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
元の空間に戻ってシェーラを探すと彼女はいつものようにベランダで洗濯物を干していた。だが、その表情に元気がないのは昨日の夢のせいだろう。まずは彼女に事情を話すことが先決だ。俺はなるべく彼女が驚かないように話を切り出すことにした。
「シェーラ、元気がなさそうだけど、どうかしたのか」
「ああ、ハル。なんでもないですよ」
こういう時、この子は俺に心配をかけないように本心を隠すんだよな。どうしたものか考えたが、このままではらちが明かないので核心を切り出すことにした。
「ひょっとしてお父さんに何かあったのか」
「…どうして、それを…」
驚きのあまりからか、シェーラは干そうとしていたシーツを床に落としていた。慌てて拾い直した後に不審そうにこちらを見た。俺はなるべく彼女に不安を感じさせないように嘘をつくことにした。
「実はシェーラのお父さんらしき人が牢に捕らえられている夢を見たんだ」
実のところ、大嘘なのだが効果は抜群だったようだ。見る見るうちにシェーラの目に涙が溜まっていく。このままでは泣き出すので俺は慌ててフォローを入れた。
「多分、その様子だとシェーラも同じ夢を見たんだよな。だとすればあれは現実の光景なのだろう。なんとかお父さんを助けたいと思う。だから力を貸してほしい」
「でも、異世界渡りを行おうとしても今のハルは弾き出されるんじゃないですか」
「何とか渡れないか試してみるよ。最悪、精神だけでも飛ばせれば何かに憑依も可能だろうから。ゲートを呼び出すことはできるかな」
「…分かりません。試したことがないですから」
「頼めるかな」
俺の頼みにシェーラはしばし躊躇った後、神妙そうな顔をした後に頷いた。