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11-9(P122)

ブラック晴彦との激闘から一週間が過ぎた。

すっかり平和になって変わったことは前に比べてクリスさんが俺やインフィニティに協力的になったことである。前であれば無断でしょっちゅう外に遊びに行ったりしていたのだが、最近では外に行く時には必ず前もって声をかけるようになったのだから大した進歩である。それだけではなく戦闘訓練にも積極的に参加してくれるようになった。クリスさん曰く、まだまだ俺のティルヴィングの扱い方は甘すぎるらしい。技を極めれば斬撃と共に全く目に見えない衝撃波を繰り出したり、音速を超える超高速戦闘を行うことも可能だという。先代勇者として良い先生になってくれそうだった。

そんな彼が最近気にしていることがあった。遊び相手である司馬さんが全く姿を現さないのだ。ワンコさんは来てくれるのだが、彼女に聞いてみるとまだ行方が掴めないらしい。

ガブリエルは三日後の未来に飛ばしたと言っていたので、そろそろ姿を現さないとおかしいのだが、流石にこうも姿を見せないとなると何かあったのではないかと不安になってくる。

そんな状況を打破すべくインフィニティに命じてインターネット回線を使って司馬さんの行方を捜索させることにした。ポンコツとはいえ鑑定スキル:∞の能力を持つ彼女である。PCとの親和性は凄まじいものがあった。あっという間にPCの電脳世界に馴染んだ彼女は意識のみの状態で世界中のサーバーを渡り歩きながら司馬さんの行方を捜索してくれていた。そんな彼女でも司馬さんの行方を探ることは容易ではなかった。

そんなある日、ゼロスペースでクリスさんと組み手を行っていた俺の脳内でインフィニティの慌てふためく声が響き渡った。いきなり集中を乱されたことで俺はクリスさんに背後を取られてあっという間に床に組み伏せられた。


「晴彦君、集中が足りないなあ」

「待った、クリスさん、インフィニティがなんか騒いでるんです」

「ポンコツ君が?」


隙をつかれたことの言い訳ではないことを分かってくれたのか、クリスさんは組み敷いていた態勢を戻してくれた。起き上がった俺はインフィニティに語り掛けた。


「いきなりどうしたんだ、インフィニティ」

『マスター、早く出てきてください!大変なんです!』


いつにも増して慌てているインフィニティの様子にただならないものを感じた俺はクリスさんと視線を合わせた後にゼロスペースから飛び出した。部屋の奥のPCの前ではインフィニティとシェーラ、そしていつの間にか来ていたワンコさんが青ざめた表情で画面を見つめていた。一体どうしたというのか。

俺達が来たことに気づいたインフィニティは震える手で画面を指さした。そこに表示された映像に俺はゾッとなった。画面には『山中の怪‼謎の村の石像群を追う!』と書かれた白字のテロップが映し出されており、そこには数多くの石像が並んでいた。どの石像もまるで今にも動き出しそうな躍動感に満ち溢れていた。そんな映像の中に一際苦悶の表情を浮かべている石像があった。どこかで見たような西洋剣を掲げながら制止している石像。それはどう考えても司馬さんにしか見えなかった。


「司馬さあああああんっ!!」


俺は思わず画面を掴んで叫んでいた。何という変わり果てた姿になってるんだ。未来に飛ばされた後に一体何があったというのか。石化しているとはいえ他人の空似とは思えなかった。第一、あんな物騒な剣を構えている人は一人しかいない。


「インフィニティ、この映像は一体…」

「動画検索をしていたら偶然に見つけたんです」

「場所はどこなんだい」

「えーと、今検索しますね…えーと、■■県の山中のとある集落にある馬翁村と呼ばれる村のようです」

「■■県?」


一体どうしてそんな場所にいったんだ。インフィニティが村の名を言った瞬間にワンコさんが「ああ!!」と大きな声をあげて頭を抱えた。急な大声を出されてびっくりした俺たちの視線が一瞬にしてワンコさんに集中する。自分でも大きな声を出すつもりはなかったのか彼女は困り果てた表情で周囲を見渡した後にか細い声で言った。


「…私、その村の事を聞いたことがある」

「何か知ってるんですか、ワンコさん」


ワンコさんは俺の問いかけに静かに頷いた。そして言った。


「馬翁村は魔王が潜むと言われている村だ」


ワンコさんの言葉にその場の空気が凍りついた。


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