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11-3(P116)

斬撃による衝撃波を何とかかわした俺はゾッとなった。躱した先の地面があり得ない深さまで抉れていたからである。ぱっと見で底が見えない。おかしいだろう、俺が衝撃波を放った時にはあんな威力になったことがないぞ。奴はどうなっているんだ。さっきから何らかのチートを行っているとでも言わんばかりの攻撃を行っている。俺をコピーしたにしては殺意が高すぎる。


『魔力限界突破のスキルを斬撃に混ぜ込んでいます。あんな使い方があるなんて…』


脳内で語り掛けてくるインフィニティの声にも焦りが感じられた。そんな俺に偽晴彦は容赦なかった。一瞬にして俺の背後に現れた奴は背中の夥しい腕に持った長剣と二本の魔剣で凄まじい数の突きを放ってきた。危うく穴だらけにさせられそうになった俺は済んでの所でインフィニティの突き飛ばしによって助けられた。だが、その代償としてインフィニティの身体が串刺しになる。その景色はまるでスローモーションのようだった。


「インフィニティ――!!」

『呼びましたか』


うおっ!目の前で死んだ者にいきなり脳内で返事をされて俺は心臓が飛び出そうになった。


『あーあ、せっかく作った分身体が穴だらけですよ。ああ、ご心配はなさらないでください。私のコアはあくまでもマスターの体内にありますから』

「そういうことは早く言えよ」

『心配してくれたんですね、マスター。…来ます!』

「わかってる!」


インフィニティを串刺しにしても飽き足らずに偽晴彦は襲い掛かってきた。それを防ぐために俺はアイテムボックスから二本の小刀を取り出した。

それだけではなく千手観音を起動して副腕に武器を持たせて相手に応戦する。こちらはホヤのような偽物だが、なりふり構ってはいられなかった。だが、相手の斬撃はことごとく俺の千手観音の武器を破壊すると同時にその腕をズタズタに切り裂いた。副腕といってもダメージがまるでないわけではない。腕を切り裂かれたような激痛に意識が遠のく。だが、奴はまるで容赦というものを知らなかった。向かい合わせとなった俺の顔面目がけて先ほどインフィニティが放ったのと同威力の破壊光線を放ってきたのだ。一瞬でも判断が遅れれば致命傷だった。慌ててのけ反ったことで助かったのだが、その背後のビルが破壊光線の直撃を受けて倒壊していく様子を見てゾッとなった。こいつ、街がどうなっても気にもしていないというのか。


「暴れるのをやめろ!お前の狙いは俺達だろう」

「最優先は藤堂晴彦とデモンズスライムの捕獲。手段は選ばなくていいと命令されている」

「ふざけるなよ…」


瞬間的に衝動的な殺意が沸いてきた。ひょっとしたら説得できるかとも思っていたが、街がどうなってもいい等という輩と仲良くなれるほど俺はお人よしではない。かといってこのまま戦闘を続けたら街への被害がどうなるか分からない。冷静になるんだ、晴彦。

俺は奴と距離を取って作戦を練った。普段使っていなかった思考加速を使って最善の策をインフィニティと導き出した。このまま逃げる。トンズラして態勢を整える。逃げるが勝ちという言葉もある。俺一人でどうにもならなくても司馬さんやワンコさんと合流できれば何とかなるだろう。このまま奴の視界を潰してアパートにいるシェーラを連れてこの場から脱出する。

そうと決まれば奴の視界を潰すのが先決だ。俺は体内で魔力を練りながら機会を伺った。奴は俺が動かないことに業を煮やしたのか、神速を使って襲い掛かってきた。だが、それは予想済みの動きだ。奴が俺の懐に入ってきた瞬間に俺はとっておきのスキルを放った。

【御神体モード】。体を眩い発光体にすることで相手の視界を潰す。狙いが決まったことににやけた俺は次の瞬間に絶句した。何時の間に装着したのか、奴がサングラスをかけていたからだ。そんなんアリかよ。絶句する俺のみぞうちに鈍い衝撃が走り、俺は意識を失った。




           ◆◇◆◇◆◇          




同時刻。晴彦と偽晴彦の戦いを上空から見守っていた者がいた。クリスである。事前から嫌な予感がしていたクリスは一足早く上空に逃げ出していたのである。彼に言わせれば逃げたのでなく物見だとでもいうだろうが、晴彦が破れたことにさすがのクリスも冷や汗を掻いていた。


「冗談だろう。あの晴彦君をこうも手玉に取るなんて。しかもこの波動、前にも感じたことがある…」


間違いなくこの波動は熾天使のものだ。かつて世界を混乱に導いたデモンズスライムとなったクリスを封印した魔術師を影で率いていた者、それが熾天使だった。熾天使による多重次元封印術によってクリスは長きに渡って封印されてきたのだ。自分を封印した憎い相手の気配を間違えるクリスではなかった。問題はその気配が偽晴彦とは別のところからすることだった。いったいどこから。そう思った瞬間、クリスの頭上に何者かが現れた。クリスがその気配に気づいて上を向こうとした瞬間に凄まじい衝撃がクリスの頭を襲った。物理吸収が全く効いていないことに気づく暇もなく、クリスは流星のような勢いで地上に堕ちていった。殴りつけた相手、熾天使ガブリエルはそんなクリスを冷たく見下ろして冷笑を浮かべた。


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