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11-2(P115)

爆炎の中から現れる人影は皆無だった。確実に仕留めたと思ったのかインフィニティが不敵な笑みを浮かべる。そんな彼女に対して俺は育て方を間違えたかなと内心で思った。

だが、その次の瞬間にその余裕は吹き飛んだ。爆炎そのものが一瞬にして掻き消えたのである。一体何事か。戸惑う俺は仰天した。二人いたはずの黒服がいつの間にか一人になっているではないか。しかもそれはまともな人間の姿をしていなかった。真っ黒な人影にしか見えないそれはゆっくりとこちらに近づきながら呟いた。


『藤堂晴彦の戦闘データと特殊個体インフィニティのデータ収集完了。これより【イミテーション】を開始する』


瞬間、人型の形をした闇が蠢いた。闇は膨張し、不規則に動きながらも次第に一つの形を取りつつあった。何だか嫌な予感がした俺はインフィニティに叫んだ。


「インフィニティ、まずいぞ、もう一回さっきのを撃て!!」


インフィニティは俺の命令に黙って頷くと口から怪光線を放った。だが、そこで信じられないことが起こった。闇が光線を吸収したのである。闇は光線をまともに受けながらも、それをエネルギー源にするかのように膨張し始めた。


「まずい、インフィニティ、撃つのをやめろ!」


俺の指示と同時にインフィニティが光線を撃つのをやめる。だが、時すでに遅く、闇は一つの形を取りつつあった。それは普通の人間よりも一回り大きく、どっしりとした印象を持ったシルエットであった。何故か親近感がわくシルエットだな。そう思った俺は次の瞬間に凍りついた。影の外殻が卵のように割れたかと思うと中から見慣れた人間が現れたからだ。浅黒い肌をしていたがその姿は間違いなく俺の姿そのものだった。もう一人の俺は感情など全く籠っていない視線を俺とインフィニティに向けた。


「インフィニティ、あれは幻覚の類か何かか」

「…残念ながら解析の結果、あれはマスターと全く同等の力を持っています」

「冗談だろう、だったら試してやる」


努力もなしに急に現れて全く互角の力を持っているなんて信じられるか。そう思った俺はクロックアップを使った高速移動で相手を翻弄することにした。だが、次の瞬間に冷や汗を掻いたのは残念ながら俺の方だった。何故ならばクロックアップを使用した空間の中で奴はぴったりと俺の動きについてきていたのだから。ゾッとなった俺は衝動的に殴りかかった。瞬間、おかしな手ごたえを感じた。手ごたえらしきものがないのだ。幻覚か何かか。そう思った俺にインフィニティが脳内で語り掛けてくる。


『幻覚ではなく奴は物理吸収を使用しています。謎の熱源を感知、マスター、すぐに奴から離れてくだ…』


インフィニティが最後まで言い終わる前に全く同じように殴り掛かられた俺は派手に地面に転がった。おかしいだろう、同じ力だといっていたのに倍ほどの威力があるじゃないか。倍?よく考えたらその力を持っているぞ、俺は。


「倍返し…」


奴が放ったのは間違いなく俺の所有しているスキルだ。物理吸収と倍返しのえげつないコンボを使うなんて聞いてないぞ。物理吸収は体重増加のデメリットがあるからこちらは使用を控えているのに全く控える様子もない。こいつ、思った以上に厄介な相手だ。

ふと俺は手元に持っていたティルヴィングを手放していたことに気づいた。奴から目を一瞬だけ逸らして周囲を見てみると地面に刺さっている愛剣の姿があった。奴の注意を逸らしてティルヴィングを抜く必要がある。そう思った瞬間、奴の口が三日月のような笑みを浮かべた。


『帝王の晩餐』


そう宣言した瞬間に奴の舌が鞭のようにしなったかと思うと地面に刺さったティルヴィングを奪った。あっという暇もなかった。一瞬にして魔剣を奪った奴はそれを右手に握ると再び宣言した。


『ティルヴィング召喚』


奴がそう宣言した瞬間、何も持っていなかった腕にもう一本の魔剣が現れる。魔剣の二刀流なんて聞いていないぞ。なんで俺の魔剣まで扱いこなせるんだよ。焦る俺に対して偽物は更に宣言した。


『千手観音』


その瞬間、その背に凄まじい数の腕が現れる。そのいずれにもが長剣を構えていた。やばい、殺意が高すぎる。


「マスター、あの腕の化け物はなんですか」

「あれが本来の千手観音の正しい姿だよ」

「まさか…では私が作り上げた千手観音は何だったというのですか」


間違いなく化け物だよ、俺は心の中で突っ込んだ。偽物の方が正しくスキルを使用するなんて頭が痛くなる話だ。思わず頭を押さえたくなる。そんな俺たちに向けて偽晴彦はティルヴィングによる斬撃の衝撃波を放ってきた。逃げる暇などなかった。


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