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10-7(P109)

特殊な空間の発想をシェーラから得た俺は早速新たなスキルを作成することにした。空間の作成に使用する【空間魔力制御】と【快適空間作成】の使用許可をインフィニティさんが願い出たので快く承諾した。なんでも特殊空間自体は魔力の流れを調整することで作成することができるため、該当スキル同士のノウハウを統合すれば時間はかかるものの作成可能という事である。だいたいそれには一晩かかるという事なのでその間に俺は準備に移ることにした。

準備というのはクリスさんの胃袋を満たすための準備である。

市販品でもいいのだが、趣味を活用しようと思ったからである。唐突で申し訳ないが俺には隠れた趣味がある。それは洋菓子作りだ。これまで語ってこなかったのだが、引きこもり生活の初期はスーパーで食材を買っては自宅のキッチンで夜な夜なクッキングを行っていたのだ。

異世界召喚物の主人公は何故か料理がうまいものが多いためにいつ異世界に召喚されてもいいように準備していたといっても過言ではない。ある意味で現実逃避だよな。残念ながら体重を増やすマイナス要因にしかならなかったのだが、ノウハウがこんな形で役に立つとは人生は分からないものである。

近くのショッピングモールのスーパーと同じ敷地内にある輸入品雑貨屋で食材を購入した俺はアパートに戻って準備を始めた。今日作るのは紅茶のシフォンケーキとプリンである。

まずは手始めにプリンのカラメルを作るために鍋に砂糖と少量の水を入れてから中火で炒める。熱で溶けていく砂糖は泡をブクブクとあげて個体から液体となっていくのだが、それでも止めることなく炒めていくと次第に砂糖にカラメルの色がついていく。そこまで来たらすぐに小さじ一杯程度のお湯を準備して中に流し込むと熱で蒸発するが、構わずに混ぜ込んでいく。砂糖の焦げる香ばしい匂いに釣られて見にきたシェーラがびっくりして俺の背に隠れる。その様に苦笑しながらも火を消した後にお湯とカラメルをよく混ぜながらプリン用の容器に流し込む。これでまずはカラメルの出来上がりである。

後始末も忘れてはいけない。流し込んだ後に鍋にくっついたカラメルは冷えるとすぐ固まるので水洗いが困難になる。そうならないように少量の水を鍋に入れて熱すると残ったカラメルが水に溶けていくのだ。少し薄いカラメル液になった後はマグカップの中に流し込んで牛乳を混ぜ込む。そうするとカラメルミルクの出来上がりである。シェーラに差し出すと恐る恐る口にした後は目を見開いて一気に飲んでいった。傍目から見て実に旨そうな飲みっぷりである。あのカラメルミルク、うまいんだよなあ。一口くらい飲みたかった。

それが終わった後は砂糖と牛乳、生クリームとバニラオイルを鍋に入れて沸騰寸前まで煮詰める。同時に行うのは卵黄を複数ボウルに入れて泡立てないように気を付けながら泡だて器でゆっくりと混ぜ込む。なぜ泡立ててはいけないかというと泡立てるとその空気の泡が気泡になって巣が立ってしまうからである。

牛乳が温まった後はゆっくりと卵黄に混ぜ込んでいく。混ざり切った後は目の細かいストレーナーで漉してから不純物を取り除く。これによってプリン液が出来上がる。後はカラメルを入れた容器にプリン液を流し込んで表面の気泡をキッチンペーパーで取り払い、蓋をした後でお湯を容器の半分ほど入れた鍋の中で15分程度コトコトと煮るだけである。ここで気を付けないといけないのは蓋をして密閉することと強火で煮詰めないことである。

出来上がったかどうかは取り出した後に机にトントンと置いてみればよく分かる。振動で液体のような波が立つようなら煮詰めが足りないし、それが少なくなれば出来上がりだ。後は冷蔵庫でゆっくりと冷やしこむだけである。

俺の手際を見ていたシェーラが目を丸くしていた。どうしたのか尋ねたら彼女は目をキラキラさせていた。


「ハルがこんなにお料理が得意とは知りませんでした」

「あはは、大げさだよ」

「どこで習ったんですか」


聞かれたので俺は正直にネットの無料で見られる料理レシピのサイトの名前を言った。当たり外れも多いのだが、実際に主婦が活用しているレシピが多いので下手な料理教室より役に立つんだよな。

シェーラに褒められたことで気を良くした俺は続いて紅茶のシフォンケーキを作ることにした。シフォンケーキを作るうえで大事なことはサラダ油を使う事としっかりしたメレンゲを作ることである。

小麦粉を使う人も多いのだが、俺はしっかりと膨らむフワフワの生地が好きなために市販のシフォンケーキミックスを使用する。ベーキングパウダーが入っているからオススメだ。

まずはオーブンレンジの余熱モードを設定してシフォンケーキミックス、砂糖、卵黄、卵白、サラダ油、紅茶の葉、そしてティーパックを入れたホットミルクをまずはテーブルの上に並べる。快適空間を利用しているためにキッチンは快適そのものの広さである。

シェーラが卵の使用数を見て目を丸くしていた。確かに5個も使えばびっくりだろうな。だが、この卵を惜しめば美味しいシフォンは出来上がらない。

まずは卵黄を泡だて器で混ぜ込みながらサラダオイル、ホットミルクをゆっくりと流し込んでいった。その後で1/4の砂糖、ティーパックから取り出した紅茶の葉を混ぜ込んでいく。高級品にこだわる人もいるが、俺は市販のメーカーのものが好みだ。フルーツの入っているもの、特にピーチティーなどがフレーバーとしてはお勧めだ。

それが終わった後は別のボウルに入れた卵白をハンドミキサーの高速で混ぜ込みながら砂糖を何回かに分けて入れていく。卵白は根気よく混ぜていくと次第に空気と混じってメレンゲに変わっていく。ここで気を付けないといけないのはあらかじめ卵をしっかりと冷やしておくことである。冷やしていないとメレンゲに固まらないことがあるので注意が必要だ。メレンゲがしっかりと混ざってきたら仕上げにハンドミキサーを低速モードにしてメレンゲの中の空気の泡を細やかにしていく。最後はミキサーを止めた後にメレンゲを持ち上げた時にしっかりと角が立てば充分である。

後は卵黄とメレンゲ、シフォンケーキミックスをしっかりとゴムベラで十字を切るように混ぜ込むだけである。混ぜ込みが足りないと焼きムラができるから覚悟を決めてしっかりと混ぜこむ。メレンゲがしっかりしていればちょっとやそっとでは空気が潰れることはない。

後は出来上がった生地をシフォン型に入れてオーブンで焼き上げるだけである。一連の工程を見ていたシェーラが目を丸くしていた。


「ハルは器用にいろんなことができるんですね」

「根が食いしん坊なだけだよ」


俺は苦笑しながら洗い物を始めた。その後、オーブンの強化ガラス越しにシフォンが膨らんでいく様を見てシェーラが大興奮していたのは言うまでもない。




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