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10-1(P103)

その日の朝、俺は寝汗をべっとりと掻きながら起き上がった。凄まじい夢だった。俺がダイエットに成功しないことで元の世界に帰れなくなったシェーラが身を儚んで懐剣で喉をついて自決するという悪夢にしか思えないような内容だった。彼女がそんなことをする人間だとはとても思えないが、自分の体重が暫く減っていないことは確かである。危機感が薄れているのではないのか。そのことに気づいた俺は青ざめた。よくよく考えてみれば最近は自分に言い訳をしてクリスさんのご飯に付き合ったりしていた気がする。減量などできるわけがない。

このままでは自分がダメになる。そう思った俺はあらためてダイエットに勤しむことにした。効果的なのは炭水化物抜きと長時間の有酸素運動だという事はこれまでの結果から分かっている。大事なのは短期間で確実に痩せることである。

気持ちを引き締めた俺は部屋の壁にグラフを作ってそれに体重の変化を記入することにした。一日に0.5㎏ずつ痩せていくように赤線を引き、その上に実績を記入していく。

現在の体重が103㎏なのでとりあえずの目標を80㎏に決めた。最短で考えても46日はかかる計算になる。まずは継続しよう。そう決意を新たにした俺はダイエットを再開した。




            ◆◇◆◇◆◇      




シェーラが一緒についてきてくれることでウォーキングは順調に進んだ。仲間がいるのはいいことだ。ただ、シェーラはもうダイエットしなくてもいいくらい痩せていると思うのだが。それを伝えると彼女は一緒に歩いて俺の事を応援したいのだと教えてくれた。本当にいい子である。嫁にするならこういう気立てのいい子だよな。そう思いながら歩く。とにかく歩く。それだけならまだ何とかなるのだが、問題は部屋に戻ってからである。我が家には腹ペコ怪獣であるクリスさんが住み着いているのだ。こいつが騒ぐ、腹が減ったと騒ぎまくる。宿主である俺の体内に戻れば少しは静かになるのだろうが、それを行えば俺の体重は彼の補給した栄養を吸収して180kgを超える恐ろしいことになるので避けておきたい。

そんなわけでクリスさんを宥めながら肉や炭水化物がたっぷりの食事を与えて、なおかつ自分にはダイエットメニューだけで過ごす。これはある意味で地獄のような作業だった。だってさ、目の前で盛られたご飯はあまりに旨そうなんだぜ。辛すぎるだろう。それをクリスさんに告げると彼は笑って答えた。


「大変だな、これも試練だと思って諦めたまえ。ああ!ご飯、超うまい!」


ちきしょー、あとで覚えていろよ。そんなことを思いながらも一週間耐え抜いたことで過度のストレスを感じながらも俺の体重は3.5kg減ることができたのである。




            ◆◇◆◇◆◇      




翌週、ウォーキングをしていた俺は何者かの気配を感じて共に歩くシェーラを引き留めた。殺気はないようだが、遠目から何者かが後をつけているようなので魔力感知を使って居場所を特定した後に時間高速移動であるクロックアップを使って確認してみた。制止した時間の中で電柱の影にいたのは例のギャル子だった。全く執念深い奴だな、こいつも。

何とか振り切ろうと思った俺はクロックアップしたまま、シェーラをお姫様だっこのように抱きかかえると神速を使ってその場から立ち去った。途中でクロックアップの制限時間が切れたことでシェーラが抱きかかえられていたことに気づく。


「ハ、ハル!いったいこれはどうしたというのですか」

「ああ、ごめんね。今下ろすよ」


そう言って立ち止まってから、ゆっくりと道に下ろすと彼女は耳まで真っ赤にしていた。混乱のあまりからか唇をパクパクと開け閉めしている。見ている分には可愛らしかったが、恥ずかしい思いをさせたかと反省した。そう思っていることを伝えるとシェーラは首を横に振った。


「いえ、そうじゃないんですが。ああ、気持ちの整理ができない…」


そう言ってシェーラは俯いたまま黙り込んでしまった。俺もなんとも気恥ずかしくなったのでそれ以上の議論は打ち切って家に帰ることにした。そんな中で先ほどのギャル子の事を思い出した。ストーキングが目的だとしたらシェーラの身に危険が及ぶ可能性がある。そろそろ奴が何を企んでいるか確認が必要だ。そう決意して行動に移ることにした。


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