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第十六話 ~特異地形、”蒼煙の森”へ~



ナフェリアに道の案内を基本的に任せ、俺たちは北西へと進む。

目的地へは直線に進むことが出来るルートだが、このルートを辿る場合幾つか危険な点がある。

一つ、”骸追い”と呼称されることの多い獣の姿をした原生生物が多く住んでいる箇所を通るということと、単純な地形的な問題だ。

”骸追い”は”脳食い”に比べれば人類への脅威度は少ない。名前の通り、”骸追い”は人間や他の生物の死骸を主に喰らう原生生物であり、深部の森の中では生態系の下位に属する、どちらかと言えば捕食される側の生物なのだが、あくまでもそれは深部の森の中で(・・・・・・・)の話なのである。

浅い森では強力な部類の原生生物に属し、なによりも”骸追い”は群れで動くため非常に数が多い。集団で襲い掛かられては仮に武装を持っていたとしても、相性によっては瞬殺されてしまう。

なお、彼らは鼻がいい代わりに目が悪いため、道具を使って臭いを消せば安全に通り抜けられる。

………そして後者、地形的問題に関しては。


「も、森が………燃えています………」

「深部の森の特異地形の一つ、”蒼煙の森”だ。見ての通り、樹木が延々と燃え続けてるっていう何とも厄介な場所なんだよなぁ」


立ち止まり、上を見上げたナフェリアと一緒に、目線を上昇させる。

目に入るのは、黒い樹木と蒼い炎。

―――そう、炎自体が蒼いのだ。樹木の方は焼けてしまったが故に黒の色合いだけど、この樹の方もなんと数百年は燃え続けているそうだから、樹木自体も特殊なものであるというのは明白な事実だったりする。

実際、植生を見比べてみるとこれだけおかしいんだよな。質感、つまりは樹木自体の材質がまるで石のようで、この消えない炎で炙られても焼け落ちていないのはその特別性が由来なのだろうと俺は推測している。


「炎の温度はかなり強いから注意するんだぞー。この化石樹以外は近くに放り投げただけで燃え尽きるレベルだからな」

「なんでこんな不思議な光景が作り出されたんでしょうか………」

「んー、一説によると強力な原生生物同士の縄張り争いが元じゃないかとか言われてるなぁ。まあ、龍種同士が戦えばこのくらいにはなるだろう」

「龍種………世界最強の生物………ですか」


元来、この世界には魔力というものがある。

俺たち命核解者はどちらかというと科学畑の人間なのでその魔力とかはあまり感じられないし、魔力を使う魔法は、エリクシールから作り出される道具や武装でしか使えず、それもその特性の一片を使っているだけに過ぎないのだが、それはともかくとして。

魔法を専門的に扱い、研究する多くの魔術師たちですらその足元にも及ばない、とんでもない魔力量と特殊な魔法を扱う生物がこの世には存在している。

それが龍種―――ドラゴンと呼ばれている原生生物だ。

もちろん魔術師でもその龍種と対等に戦えるだけの怪物はいるし、師匠は何度も龍種を狩りに言っているほどの猛者だったりするので、最強生物であっても無敵ではないのだが。

なお、ヴィヴィも研究の一環で”龍騎の鎧”の二つ名を持つ龍種の素材を使っている。これに関してはヴィヴィの前で、あの半透明の壁についての説明をしたときに話したよな。


「では、この樹木の方も………?」

「多分な。これほどの温度に焼かれ続けても燃え尽きない樹木とか、不思議物質過ぎるし。というかこの樹硬すぎて何をしても採集できないっていう特性あるし」


如何に深部の森とはいえ、急な植生の変容に加えての極一部分だけの特殊素材が発生しているとなれば、疑うのは原生生物の干渉である。

本当にいろんな生物がいるからなぁ、この世界。天変地異すら巻き起こすようなのもいるんだぜ。あと兎に角巨大だったり。


「水被ってから進むのが普通に取れる手段として有効なんだが、俺たち命核解者はこういう場合は道具を使うんだ。………よいしょっと」


懐から取り出したのは”脳食い”から逃げた時に使ったものとは別の小瓶だ。具体的に言うとちょっと大きめ。

先と同じようにその蓋を開けて血液を垂らす。


「先生、それはなんでしょう………?」

「不燃剤だよ。この小瓶の中で現象発生を行って、空気中に火を通さない空間を作ってるんだ」


方法としては、現象発生させた小瓶の中から水蒸気のように飛び出した粒子がこの小瓶を中心にして周囲に拡散、一定以上に温度が上がらなくさせることによって延焼を防いでいるのだ。

紙でも水が染みこんでいれば、中の水分が完全になくなるまで燃えてなくならないのと同じ原理だな。


「水を被るよりもはるかに安全なんだが―――なんか、これ使ってもこの火は消えないんだよなぁ」


普通、この不燃材を使うと物の温度が発火点以下になってしまうため、火が付いているものでも問答無用で消えるのだがこの蒼炎はただ他のものに燃え移らなくなるだけで、炎そのものは消えないのである。本当に不思議なことである、是非とも研究したいけどそのためには色々と準備が必要だ。


「いろんな道具があるんですね………」

「ああ。ま、俺が使ってるのは割と初歩的というか、基礎に分類されるものなんだけどな」


煙りをだしたり、不燃空間作ったり、あと簡単な爆弾とか、ちょっと特殊な硫酸とか。

道具でも凝る人は本当に凝るんだけど、例によって俺は不老不死のためだけに研究を行い、走り抜けていったためにあまり細かい道具なども作ってはいない。

この片眼鏡くらいかな。


「あれ?というか、血を入れていたのは………?血をトリガーにして起動………いえ、反応液ならもう片方も反応液じゃないとだめですよね………?」

「お、そこに気が付いたか~」


不燃剤を散布しながら蒼煙の森を進んでいると、ナフェリアがふとした様子で先程の俺の行動に疑問を浮かべていた。

そう、その通りだ。

現象発生液に万物融解剤を入れるのが普通の道具の使い方。しかし、俺の場合は自分の血液を使っている―――当然、これは当たり前な事ではない。

爪の先で指先を切りつけ、再び血を出す。滴り落ちる血は、地面に完全に落ちきる前に………蒸発して消えた。


「見ての通り、俺の血液は特別なんだよ。実際にどこがどう特別なのかは、これからの研究で見つけ出すんだ」

「え、えっと。つまり課題、ですねっ」

「そういうことだ!」


なお、この血は俺の意思次第で形状を保ったまま………血の形として普通に残したり、あるいは固形化(・・・)したりすることも出来る。

まあ、ナフェリアならすぐにわかるだろう。既にヒントとなる言葉は言っているしな。


「あ、”蒼煙の森”を抜けます………次の危険ポイントは、”骸追い”………それを超えれば、目的地ですね」

「おう!気を抜かずに行こうか」

「は、はい………!」


地形把握、方向管理とここまでの移動ルートの確保はおおむね及第点と言えるだろう。問題は、この先の”骸追い”だ。

鼻がいい彼らからどう隠れて進むか、そしてそのための方法を見つけられるか。

与えられたこの状況で、どれだけの最善手を打てるかの試験というわけである。………さあ、一緒に頑張ろう、ナフェリア。






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― 新着の感想 ―
[一言] なんとも便利な血だなぁ。 ナフェリア、頑張るんだよ! 更新、ありがとうございます!
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