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「ふん、小賢しい小娘だ。
・・・それで?
結局はアシュフォードの仇討ちが目的か?」
「うーん、ま、一応、そういう名目で来てますけど、ね」
パリストが聞くと、アリスは中途半端な答え方をする。
それを小馬鹿にしていると受け取った、遂に配下の人間たちが怒声を上げ始めるが、ここはパリストが敢えてそれを制する。
パリストは女の態度が何らかの戦術ではないか、と冷静に分析しているようだ。
「あたしも・・・一つ、聞いていいですか?」
「ほう・・・なんだ?」
手下を殺し、いきなり踏み込んできた者の質問など本来なら答えるはずもないが、あるいはパリストも興味を惹かれたか。
「どうして・・・マリアまで殺したんですか?」
今までどちらかというと緩みがちだったアリスの顔が急に影を落としたように暗くなり、朱い視線が睨みをきかすようになる。
「マリア・・・?
誰だ、それは」
「アシュフォードさんの娘です。
あなたたちが拐って、人質にし、最後には殺したーー」
「あぁ、あのただ泣き叫ぶだけのうるさい小娘か」
一瞬、アリスの身体が震えた。
まるで何かを想像、思い出したかのように。
「おいおい、俺らはあいつを殺しちゃあいねぇぜ?
あいつが勝手に舌を食い千切ったんだからよ」
再び足を庇う男が下卑た声でそう言い放った。
そしてアリスがそのことに根を持っている事に気付いた星頂人たちは、マリアの無惨な死の顛末を語り出すのだった。
おおよそ通常の感覚ならばとても耳を開けてはいられないだろう凌辱・暴行の内容。
しかもマリアが自害してからもその身体を弄んだという。
まるで小動物を複数人で殴り、蹴り殺した挙げ句、その肉すらも食らうような鬼畜劇。
マリアは何の罪もないのに惨たらしく『殺された』上に、人間らしい死に方が出来なかった。
アリスの両の拳が小刻みに震え始める。
「くっくっく・・・てめぇもあいつと同じ目に合わせてやろうか?」
男たちの舐めるような視線がアリスを捉えるようになる。
アリスの顔立ちの美しさ、女性の部分が艶かしく膨らみ、柔らかな線の肉体。
アリスが男にとって魅力的な肢体を持っていることに今になって気づき、星頂人の思考は邪な方向へと流れ始めたのである。
「ーーやっぱりあたしがいけなかったんだ」
そんな中、アリスの声が小さく響いた。
それを皮切りに場が不気味に静まり返る。