表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅砂を駆けるスタンピード ~blood of jane~  作者: 天王寺綾香
一章 カラミティ・ジェーン
81/265

P81

「俺と勝負してほしい」


「勝負・・・?」


「そうだ」


突然の申し出。

アリスは当然のように戸惑うが、何も命のやり取りをするわけじゃない、模擬戦のようなもの、とアシュフォードは言う。

そんな身体で、とアリスは心配する。


「身体が動く内に・・・もう一度、勝負がしたいのだ。

ティアマトーを受け継いだ『カラミティ・ジェーン』と」


「アシュフォードさん・・・」


「頼む・・・」


アリスは考えた末にその勝負に応じた。

死を前にして、何かけじめのようなものを付けようとしているーーそんな意思を感じ取ったからだ。

二人はすぐに準備を済ませて外に出るが、その時、既に起きていたある異変に気が付いていなかったーー。



ーー夜明け前。

徐々に明るくなりつつあるストリートにはまだ人の姿はない。

あるのは二人。

アリスとアシュフォードの姿のみ。


3メートル程の距離をとって向かい合った二人。

二人の腰には拳銃を差したホルダーをくくりつけたベルトが絞められている。

特にアリスは新たにティアマトーを納めた皮の袋を差しているが今回の勝負では使わない。

更に言えば互いの銃の弾倉にも弾は込められていない。

アシュフォードの言うように模擬戦のようなものだ。


勝負の方法は早撃ち。

ホルダーに納まった銃を抜き、相手に狙いを付け、撃鉄を起こして引き金を引く。

この一連の行動がどちらが早いか、である。

勝負というには判断のしづらそうなあまりに曖昧な決着方法だ。


アシュフォードの早撃ちのスピードは先日の決闘で見せている。

彼の異名『瞬きの撃ち手』とは、瞬きする間に抜き撃ちするほどの早さを持つ、得意の早撃ちから来ている。

言わば早撃ちはアシュフォードの分野である。


「・・・合図を頼む、アリス」


「ーーわかりました」


向き合って少しの間を置き、アシュフォードが伝えた。

するとアリスはポケットから金貨を取り出し、銃を抜く方とは逆の手に持つ。

そしてここでも少しの間が置かれた。

互いに利き手はぶらりと無造作に下げたまま。

離れた距離で二人の視線が合致して一つの線を作り出す。


ーーそして、アリスの指が弾かれた。

宙を高く舞った金貨はやがて落下運動を始める。

このまま推移すれば落下地点はおそらく二人の距離の中間点。


二人の視線は金貨に移る事はなく、同じ一点を見つめ合っている。


ーーそして。

勝負の狼煙を上げる金属音が二人の耳に響くーー。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ