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紅砂を駆けるスタンピード ~blood of jane~  作者: 天王寺綾香
一章 カラミティ・ジェーン
76/265

P76

「ーーバカなっ!!」


アシュフォードが病んだ身体をいとわずに轟きを上げた。


「何て事を言うんだ!

お前のおばあちゃんはな、英雄なんだ。

先の戦争ではお前のおばあちゃんが居てくれたから、俺たち『開拓民コロニスト』は実質勝利することが出来たんだ!」


アリスが言ったことではないのだが、彼女を責めるように怒鳴り付ける。


先の戦争ーー。

数十年前に起きた『開拓民コロニスト』と『星頂人パイオニア』の大規模な戦い。

当時はより被虐な弾圧にもとれる体制を敷いていた星頂人パイオニアに対し、開拓民コロニストが自らの存在意義を賭けて反乱に乗じたのである。

その戦いでは後に『平原の女王』と呼ばれるマーサ・ジェーン・カナリーは、星頂人パイオニアに体制を改める和平を提起させるという、開拓民コロニスト側の実質的な勝利に大いに貢献する。

アシュフォードことゼニス・ドマ・センチピードがマーサの相棒として名を上げたのもこの時である。


またマーサは戦いのさなか、数十・数百という同胞たちの危機を救ったのだという。

その時彼女は仲間に降りかかった災厄を救った者として、『カラミティ・ジェーン』と呼ばれるようになったとされる。


災厄から皆を救い、更には勝利をもたらした英雄、カラミティ・ジェーン。

だが本人はそうは思っていなかった。


戦争の勝利など結果論。

たまたま良い方向に道筋が開けていただけに過ぎない、と。

また同胞を救ったという話も、救った数以上に犠牲者も出していた。

またマーサのいる部隊は特に抗争が激しかったのだという。

敵から狙われるだけの力を有していたということもあるが、結果的には災厄を招き、多くの同胞の命を散らした。


戦争だから犠牲はつきもの、と言ってしまえばそれまで。


だがマーサは晩年までその事を悔やみ、まだ幼かった自分に聞かせてくれたとアリスはアシュフォードに聴かせた。

アシュフォードはそんなもの、マーサのせいではないと反論する。


祖母を必死に擁護してくれるアシュフォードにアリスは笑顔を見せたが、すぐにそれも陰ってしまう。


今度は彼女のこの八年の旅を短く話し始めた。

そしてその内容こそがマーサの言うことを裏付けていたのである。

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