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紅砂を駆けるスタンピード ~blood of jane~  作者: 天王寺綾香
一章 カラミティ・ジェーン
75/265

P75

「アリス・・・俺の最後の頼みだ」


「止めてください、最後の頼みだなんてーー」


「俺の代わりにマリアの側にいてやってほしい。

いつまでもとは言わない。

少しの間でもいいんだ。

マリアは君を気に入っている。

俺も、君がいてくれるなら安心できる」


強く懇願する瞳がアリスに突き刺さる。


やはりーー。

アリスは答えを待つ視線を受けながら思った。

アシュフォードはアリスにここにいてほしいと願っていたのである。

己の末期を悟り、

アシュフォードはおそらく無意識にアリスを自分の代わりに見いだしたのだ。

アリスは自分に最期を伝える存在であると同時に、気がかりであるマリアに幸せをもたらす、何らかの遣いにも見えたのだろう。


確かにアシュフォードに残された時間は短い。

それはこの病気について知識をもつアリスにはよく分かる。


アシュフォードがいなくなればマリアも深く悲しみの淵に落ちるだろう。

その時、側に誰かいるかいないかでは大きな違いだ。


しかしーー。


「ーーごめんなさい。

それは出来ません」


少し間を置きはしたが、アリスの答えは決まっていた。

アシュフォードは空を見るように正面へ視線をずらす。


「そうか・・・」


表情にこそ出さないが、落胆した雰囲気が見て取れる。


「あたしもマリアのことは好きだし、

この町の人も・・・きっと好きになれる。

町の人にもあたしを好きになってほしい。

でもーー」


『あたしはここにいてはいけない』ーー。


アリスのその言葉にアシュフォードは思わず声を荒げた。

何故そんなことを言うのか、と。

するとアリスはアシュフォードを鋭く見据えた。


「あたしの血は・・・『ジェーン』の血は呪われています」


「呪われてる・・・だと?」


「・・・おばあちゃんが言ってました」


祖母・マーサは生前、アリスに言い聞かせるように言っていたという。

もし将来、旅に出るなら一つの場所に長く留まってはいけない、と。

何故なら『ジェーンの血』はその場所に災厄を招くからだという。

災厄を招くジェーンの血、

それがすなわちマーサ・ジェーン・カナリーの、『平原の女王』と並ぶ異名である、『カラミティ・ジェーン』の由来なのだと。

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