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紅砂を駆けるスタンピード ~blood of jane~  作者: 天王寺綾香
一章 カラミティ・ジェーン
73/265

P73

「その薬はアリスの指示で作ってもらったそうだな?」


ベッドの脇の小さな丸テーブルの上に置いてある薬の残りが入った、紙の包みを指差しながら、アシュフォードが聞くと、アリスは黙って頷く。

何故、そこまで血砂病けっさびょうについて詳しいのかを更に訊ねると、アリスは目を反らした。


「・・・お父さんが同じ病気でした」


アリスの父もまた血砂病を患ったのだ。

アリスが住んでる地方はまだ紅砂の影響が少なかったが、出稼ぎに遠方に出掛けた際に、患ってしまったと語る。

その時を思い出したのか語るのも辛そうなアリスの態度。

その時に幼いアリスは父の看病をしていたというが、恐らくその努力が実を結ぶことはなかったのだろう。

薬に必要な薬草は彼女の祖母・マーサがその知識を授けたのだという。

アシュフォードが気を遣い、その話しは途中で打ち切られた。


「ーーでもアシュフォードさん。

その薬はあくまで苦しみや痛みを和らげるだけのものです。

いずれはその薬も・・・効かなくなるでしょう」


「・・・そうか」


今はアリスの応急処置が効いて、病気も小康状態となっている。

だがそれもあくまで一時的だという。

アリスの薬が効かなくなった時。

恐らくその時こそがアシュフォードにとって覚悟を決める時となるのだろう。

アシュフォードは目を閉じた。

死期が近い事を悟った彼はその内に何を思うのか。


「こんなこと・・・聞いてもいいのか分かりませんけどーー」


「・・・なんだ?」


「マリアのお母さんはーー?」


それはアリスが常々気にしていたことだった。

マリアの母親はどうしたのか。


ここにいないという事は、アシュフォードとの仲が壊れたのか、あるいは死別かーー。

いずれにしても聞きにくいことではあるから、アリスは今まで敢えて聞かなかったのだ。


アシュフォードはしばし口を接ぐんだが、やがて語る決心をつけたように真実を語り始めた。


「マリアは・・・俺の本当の娘ではない」


衝撃の事実にアリスは驚愕せずにはいられなかった。


前に語ったアシュフォードがマーサと別れた後の話の延長上にその真実はあった。

賞金稼バウンティ・ハンターぎに狙われるようになり、町を転々としていた彼が、一時期、廃墟ゴースト・タウンに身を隠していたことがあったという。

その時、当時赤子だったマリアを拾ったのだそうだ。

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