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「んな事は俺がやっとくさ。
アリスもマリアに付き合ってやってくれるか?」
「お、お父さん?
アリスさんは人を探して旅してるのよ?
それなのに家事なんて手伝わせたら悪いでしょ?」
「いいんだよ、アリスはしばらくここに住むんだからな」
「へ? そうなんですか?アリスさん」
「え?あ、まぁ・・・」
「わぁ、やったぁ!」
アシュフォードの言葉に一瞬狼狽しつつも、話を合わせるように頷くアリス。
すると思いがけない事にマリアが歓喜の声を上げて、アシュフォードもそんな娘を見て満足そうに笑う。
確かに前日の夜にそういう話しはあったものの、アリスはアシュフォードの考えを計りかねてるのか、怪訝な表情だ。
「んじゃ、たのむぜ」
用事は済んだとばかりにさっさと酒場の方に戻ってしまうアシュフォード。
アリスは背中が去り行くのを見守っていたのだが、空咳を繰り返していたのが妙に気になった。
「(風邪でも引いてるのかな・・・?)」
アリスはそう思ったぐらいで特に気にも留めなかった。
「それじゃアリスさん、朝食済ませたら一緒に買い物に付き合ってくださいね」
「あ、うん。
それとあたしのことはアリス、でいいよ。
敬語もくすぐったいから普通に話しなよ」
「うん、アリス!」
とても幸せな事に出会えたような、そんな満面の笑みを見せるマリアに、アリスも照れくささを覚えたように目を反らす。
ーーその後、ジェニファーを再び馬小屋の中へ戻すと、
二人は軽く朝食を済ませて町へと繰り出すのだった。
ーー夜は静かだった町中だったが、朝になれば途端にストリートは賑わいを見せていた。
家畜の馬や牛を連れてどこかに仕事に出掛ける者、はしゃぐ子どもたちの姿、皆、それぞれの用事を抱えた者たちが歩く人たちに紛れ、アリスとマリアもストリートを歩くのだった。
「ーーちょっとおじさん!
このトマト、それにこっちの桃!
穴が開いてるじゃない!」
まず二人が向かったのは市場だった。
煉瓦の壁際を背にして、屋台を築いて品物を売るお店が横に立ち並んでいる。
そこで二人は野菜や果物を見ていたのだが、木の編みかごに入ったそれをまさぐっていたアリスが何かを見つけたように、店主に突きつけた。
「ちょ、ちょっとアリス・・・」
「ほら見なさいよ、こ~んなでっかい穴開いてる!
こんなもの売り付けようとするなんて、お客をなめてんの?!」
気弱そうな小太りの店主を相手取り、クレームをつけ始めたアリス。
マリアが止めに入ろうとするも、その手を振り払って大声を張り上げる。
見慣れた町人ならともかく、アリスは余所者であるため、
周りの人たちの注目を特に集めてしまっている。




