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紅砂を駆けるスタンピード ~blood of jane~  作者: 天王寺綾香
序章 アリス・ジェーン・カナリー
6/265

P6

バイスの案に、デックは少し考えてから納得したように頷いて応じた。

もし確かに狙われてない者が二番手になれば、

狙われた者は二重にリスクを負うこととなり、

バイスの言うように公平性を考えれば妥当というところだろう。

とはいえまず一番手の銃弾を避けなければならないのだが。


――とにもかくにも大事な順番決めが終わった。

いよいよ『決闘』の幕開けである。

一番手はマントの女。


回転式拳銃リボルバー銃把グリップを両手で握り、

始めから決めていたのか迷わずその銃口をバイスに向ける。

第一の狙いをバイスに定めたわけだが、

その構え方を見た二人は天を仰ぐようにしてこみあげてきた笑いを爆発させた。


「ひゃっはっはっはっは!

 おいおい、なんだそのへっぴり腰は?

 まさか嬢ちゃん、銃撃つのはじめてじゃないよな?!」


「がっはっはっはっは!

 せめてマントぐらい脱いだらどうだい。

 それじゃあ見にくそうで、上手く狙えたもんじゃねぇだろ」


バイス、デックの二人は腹を折りながら笑いこける。

二人の笑いのツボを押すほど、マントの女の構えが頼りなかったのだ。


明らかに腰が引けて、素人目から見てもわかる緊張した構え。

銃を持つ手や腕も震えているように見え、

少なくとも銃を扱いなれているようにはとても思えない。しかしそんな構えを崩すことなく、その指が引き金にかかった。

それを見た標的であるバイスはマントの女に対して正面に向き合い、足を外に開いて臨戦態勢をとった。

必ず回避できると言わんばかりの自信に満ちた笑みを浮かべた表情。


引き金に指が掛かってからも、

じりじりと照準を合わせるように微妙な調整が行われる。

知らないものが見れば緊迫した場面も、

頼りない構えを見せるマントの女のせいか、

他の二人にはどこか弛緩した空気が流れている。


――そしてどれくらい時間が経ったか。

数十秒か、数分だったのか。

『その時』は訪れた。


火薬が弾け甲高い音が不意に空気を震わせ鼓膜を強く刺激する。


「きゃっ」


ほぼ同時に華奢な女の声が漏れる。

放たれた銃弾はどこへやら、

その行方を気にする間もなく、

デック、バイスの目に入ってきたのは後ろにひっくり返ったマントの女の醜態だった。

銃を撃つときに生じる反動に耐えられなかったのか、

あるいは間近に響く火薬の爆発音に驚いて、思わずひっくり返ったか。

いずれにしてもそんな状態で放たれた銃弾は、

どこかあさっての方向へ飛んでいったようだ。

当然標的となったバイスは無傷である。

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