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――そして。
『決闘』の時に向けて準備が整えられつつあった。
砂地に上に積み重ねられた賞金となる砂袋、
それを中心に作られた三人の人間による三角形。
ついさっきまではその辺の長さは2、3メートルといったところであったが、
今は10メートルほどまでに広がっていた。
なぜ距離を広げたか?
それは女と思しきマントの者が提案したルールによるためだ。
こうしておいてから、
これから三人は一人ずつ順番に誰か一人を標的に銃で狙い撃つ。
一人一回一発のみであり、命中させようと外そうと、その時点で次の番に移る。
それを繰り返していき最終的に残った一人が勝者となる。
ただし銃弾を受けたものはたとえ生きていたとしてもその時点で敗北となり、
撃つ番は回ってこないことになる。
以上が三人目が提案したルール。
三人一斉に戦う方法が手っ取り早く、それを考えればずいぶん回りくどく感じるルールだが、
他の二人は一風変わったその方式に面白味を感じたか、
あっさりと応じ、そしてこれからそのルールに則って『決闘』が始まろうとしていた。
だがその前に、このルールにおいてこれからもっとも大事なことを決める必要がある。
すなわち撃つ『順番』である。
「お前さんから撃ちなよ。
レディ・ファーストだ」
「へっへっへ、そうだな。
まずは嬢ちゃんのお手並み拝見ってとこだな」
バイス、デックが意見を一致させるように続けて口にした。
一番に撃てるというのは、
とりあえず最初は何のリスクも負わずライバルを一人消せる可能性があるということだ。
それはきっと有利だというのが普通の感覚だろう。
その一番をあっさり譲ったのだから、
相手が女であると知って甘く見ているのか。
ただ当然のことながら、相手の銃弾から身を避ける行為も許される。
つまり避けることができるという自信か。
あるいは別の思惑が隠されているのか・・・。
それは分からないが、その申し出に三人目はすぐに頷いた。
「さて二番目に撃つ奴だが・・・どうする?
コインでも投げて決めるかい?」
次に二番目である。
デックがまずバイスにそう持ち掛けた。
「いや、そのことだが・・・、
お嬢ちゃんに狙われた奴が二番目に撃つってのはどうだい?
一度は死線をくぐるんだ。
それくらいのボーナスはあってもいいだろ?」
「なるほどな・・・確かにそうだ。
――よし、それでいいぜ」