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「だが俺らを潰せばあんたが得る上納金だって減る。
そしてその上納金はあんたらより更に上の立場にある奴らに納めなきゃならない。
なのに上納金の額が減れば理由がどうあれあんたの評価、ってもんが落ちるーーそうだよな?」
まるでパリストの事情を全て知っているかのようなアシュフォードの口調。
そんかアシュフォードの問いかけにパリストは無表情のまま沈黙。
肯定はしないが否定もしない。
「それにあんたらが暴力を背景に俺らを脅すってんなら構わねぇ。
そう来るならこっちだって死なばもろともだ。
最後まで足掻いて死んでやるよ」
更にアシュフォードがそう続けると、後ろにいる町人に同意を求めるように声をかける。
すると町長を除いた町人がアシュフォードに乗る、とばかりにそれぞれ同意の意思表示を見せた。
「ーーどうだ、あんたらこの町の人間全員と戦うことになったらどうする?
お互いに悲しい犠牲が出るだけで、しかもあんたは一文の得にもなりゃしないんだ。
それじゃお互いに得がないだろう」
「ーー何が言いたい」
パリストの目に力が入り、眉がつり上がる。
「まぁ上納金値上げの話はなし、と言いたいところだが、
それじゃあんたもこうして出張ってきている手前、面子ってものがねぇよな?」
「ーーそれで?」
「俺と勝負しろ」
アシュフォードのその一言で、辺りの空気が急激なざわめきを見せる。
「俺と一対一で決闘しろ。
俺が勝てば上納金値上げの話は取り下げてもらおう」
「私が勝てば素直に従うということか?」
「もちろんだ、好きにするといい」
アシュフォードが持ちかけてきたのはなんと決闘である。
なし崩し的に物事を決めてしまうアシュフォードに町長もさすがに不安そうに声を上げるが、
町長を納得させる時間もなくパリストのゴーサインが出されてしまった。
平行線な争いを分かりやすく決闘の勝敗で着ける事となった今回の騒動。
確かにあのまま言い争いをしていても喧嘩騒動になるだけで、何もまとまらなかったかもしれない。
そういう意味では相手の了承も得たこの決闘ならば、良い方にしろ悪い方にしろとにかく結果は決まるのだから。
「お父さん・・・」
しかし娘・マリアはやはり心配だ。
決闘ともなれば怪我をするかもしれない、悪ければ命を落とすこともあり得る。
娘として心配するのは当然だろう。