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「あの星頂人の人・・・、
最近、前の人と代わったんですけどーー」
それから上納金の値上げが始まったのだという。
前の星頂人は上納金の値を上げる事はなかったのに、今の人物に代わってからというもの、
今日がもう三度目の値上げであるらしい。
嫌がる町人も説得しなううがら何とかかき集める上納金。
それが次々に値上げしたのでは確かにたまらないだろう。
ーー話は平行線を辿っていた。
値上げされてはとても払えないという町に対し、どうしても値上げするという星頂人。
話が一向に進まないことに両者の熱は悪い方向に高まりつつあった。
そしてついにーー。
「ーーきゃあ!」
不意に響くガラスが割れる音。
不安そうに成り行きを見守っていたマリアが思わず声をあげた。
星頂人側の人間が、空いた酒瓶を床に叩きつけたのである。
それが闘争開始の合図というように、両者の熱は遂に頂点に達した。
お互いの足がカウンターの上に乗りだし、互いの服の裾を強く掴み合う。
揉み合う形で更にカウンターの上にあったコップなどが床に転げ落ち、積み重なるような形で割れる音が共鳴する。
『ーーまずい』
見ていたアリスも直感的にそう判断し、思わず銃の収まったホルスターに手が伸びた。
両者合わせればかなりの人数。
もし喧嘩になれば、店全体での乱闘騒ぎとなるだろう。
そうなったらせめてマリアだけでも外に避難させないとーー。
アリスはそう判断してマリアの身体を掴もうとした。
「ーーよさんかっ!!」
急に心を突くようなその一喝が、その場にいた全ての人間の動きを凍てつかせた。
取っ組み合いの形のまま両者が動きを止めていると、
カウンターの奥から木の床を歩く音が静かに響き、一人の男が姿を現したのである。
「お、お父さん・・・」
「お父さん・・・?」
奥から姿を見せたのは、初老の男性。
マリアが父と呼んだその男をアリスも思わずじっと見つめる。
しっかりと伸ばした長身の背、足を少し悪くしているだが、それでも足を止めれば揺れる事なく地に着ける。
何よりその鋭い眼光が、睨まれた者全員を一瞬とはいえ萎縮させられてしまう。
さっきの一喝で熱の上がった一同を一気に冷めさせた事といい、
アリスにも彼の男が単に年を重ねた老人とは違う空気を感じさせていた。