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そうして何度か振り返り、手を振りながら二人と別れたアリス。
前方に霞んで見える町の灯りを目指し、ゆっくりとしたペースで歩き続ける。
日が沈んで夜の闇が訪れた大地。
耳が痛くなるほどの静寂に包まれる中、乾いた黄土色の土を踏みしめる音が響く。
時折吹き過ぎる、夜の冷たい風に身を震わせる事なく、アリスはただその町をまっすぐ目指した。
ーー8年の旅の末、やっと探し物を見つけたというアリス。
そう言いながらも、その場所を既に目に見える場所に捉えながら、焦って走りはしない。
それを見つけた時に初めてスタートラインに立つともアリスは言っていたが、彼女が人生をかけるもの、それは一体どんなものであるというのか。
ーーアスピークの町。
アリスの探し物の旅の終点にして、そして新たなる旅の始点となる場所。
そして『それ』は確かに待っていた。
自らの持ち主に相応しい者。
すなわち『ジェーン』の血を継ぐ者を。
ーーそしてこの世に迫る『災厄』。
それを打ち払う救世主を。
後に語られる『災厄の乙女』の伝説が今、始まろうとしている。