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ーー砂の上を行く船、アンジェリカが走り出して数十分ほど。
北東へ進んだ一行は、ついに砂漠と土の境い目が見えてきた。
見渡す限り砂丘と空の地平線という単純な視界である砂漠の真ん中からすれば、
土から生えた草々や木々、はるか遠方にその影を窺わせている町並みという景色が嘘のようである。
しかしながら元々雨の少ない乾燥帯の気候ゆえに、土は渇き、植物はやはり少ない。
さらに『紅血砂』による砂の侵食も深刻であり、この地方の人々は当然のように砂から離れて、いや逃げて生活するということを余儀なくされている。
いつ自分たちの生活が砂によって奪われるのかという不安を抱えながらーー。
砂と土の境い目に着いた砂上船アンジェリカはそこで機動を止めた。
アリスの言う町はここから更に歩かなければならない。
アンジェリカはあくまで砂の上を走るための船であり、土の上を行く事は出来ない。
それでも歩いていけば数時間はかかるだろう砂漠の距離を、大幅に短縮した事はアンジェリカに感謝すべきであろう。
「ーー送ってくれてありがと、ボブ。
助かっちゃった」
「なーに。
また乗っけってほしかったらいつでも言ってくんな!
嬢ちゃんなら喜んで燃料使ってやるぜ」
大地震のような揺れの中、数十分を耐えたアリス。
だがアンジェリカを降りたアリスの足取りは軽い。
馴れているだろうボブやボビーと違い、普通なら揺れに酔ってまともに歩けなくても不思議ではない。
アンジェリカを降りたアリスであるが、シャツの上に肩から袖先の部分を千切ったような厚手の皮で織った上着を着込み、その上からマントを羽織る。
前のように顔を隠したりはせず、代わりにバイスやデックがかぶっていたような大きな帽子で頭を隠す。
手荷物はなく腰のベルトには銃が納まったホルダーの他に、小さな布袋が3つ括り付けてある。
アリスは煩わしい荷物や装備が嫌いらしく、必要最低限に済ませたいようだ。
今身につけた、帽子や上着もボブに預かってもらっていたようである。
「それじゃあたし、行くね」
「おぅ。
俺たちは夜明けまではここにいるが、
それ以降、何か用事があったらいつも通りに合図を頼むぜ」
「姐さん、気をつけて!
姐さんの処ならどこへでも飛んでいくからさ!」
ボブやボビーも一度アンジェリカを下りてアリスを見送る。
ボビーは特に残念そうにしているものの、明るく言葉を掛けている。




