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紅砂を駆けるスタンピード ~blood of jane~  作者: 天王寺綾香
序章 アリス・ジェーン・カナリー
23/265

P23

「グラム、7で買い取ろう」


「・・・いいの?」


「こんな上物の『血石』はそうそう手に入らないしな。

むしろ売ってくれたアリス嬢ちゃんに感謝してぇぐれぇだ」


「あはは、ありがと、ボブ」


アリスの指定したレートよりも高く買い取るというボブに、アリスは嬉しそうに顔を綻ばせた。

アリスとボブは売り手と買い手の関係でもある。

そして普通は一番難航しやすい売りレートの交渉があっさり終わってしまう辺り、互いに信頼がある証拠だ。


交渉が滞りなく済んだということで、アリスは残りの布袋も取りだし、ボブの目の前に積み重ねていく。

しかし全部というわけではなく、二袋だけは残すのだった。


「なんでぇ、全部売ってくれるんじゃねぇのか」


「これはね、ちょっと別の用事で使うの」


「他の業者に売るってのかい?」


「ふふ、それは秘密」


怪訝な表情のボブにアリスは人差し指を口元の前に遣りながら可愛らしく微笑んで見せる。

教えてくれないから余計に気になるのか、ボブは頭を掻きながら釈然としない視線を向けるばかりだ。


ーーそれから少しの時間を費やして、

アリスが持ってきた『ブツ』の最終的な査定を終えたボブはその買い取り価格をアリスに伝えていた。


「ーーいつも通り、二割でいいよ。

残りは預かっといてね」


「そうかい、なんかわりぃな」


「そんなに現金持ったって良いことなんてないしね。

むしろ信頼できる人に預かってもらった方がこっちも助かるの」


「いや助かる」


アリスの言葉の意味は今回受けとるのは査定価格の二割で良いということである。

もちろんボブの方には払う用意はあるのだが、今この時払う金額が少なく済むのはやはりありがたいのだろう。

アリスも高額の金銭を預かってもらって利害は一致しているということか。

もちろんこのやり取りも長年の信頼の上に成り立つものである。


敢えてそうしていたのか、ゴミに埋もれていた金庫からアリスの希望の金額を布袋に詰めると、

毎度、と言いながらボブはそれを手渡した。

中身は金貨。

銅、銀、金貨の順に価値の高いこの世界に於ける通貨。

二割と言えど、それなりの重量を持っている。

当面の生活に苦労はしない金額であろう。

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