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「待たせて悪かったな。
どうもこのポンコツ、最近俺の言うこと聞かなくってよ、
今までずっと叱りつけてたところよ」
「ふふ、大事な商売道具にして『女房役』だものね?
しっかりボブさんが可愛がってあげないと」
「だはははははっ!
ま、やり過ぎちまうとホンモンの女房みたいに逃げちまうかもしれねぇしよ!
適度に優しくすんのが女も機械にも大事ってな?」
彼の言葉を要約すれば今までやっていた整備のことに関するものである。
逃げた女房の下りなど冗談か本当か分かりづらいが、その異様とも言えるような高ぶりで捲し立ててくるボブの声に、アリスも言葉を返しながら素直に笑い声を上げている。
「ーーさて、と・・・」
首に巻いていたタオルで顔を拭いながら、テーブルを挟んでアリスの向かいに腰掛けるボブ。
拭うタオルも既にかなり汚れているせいか、拭う行為にあまり意味がない。
「早速だが、ビジネスの話と行こう。
・・・『物』は?」
つぶらな瞳がアリスをじっと見据えた。
二人はお互いに馴れた仲であるのは明らかだが、ここからはたとえそうでも妥協はしないという表情。
いわゆる『商売人』としてのボブの一面がそこにあった。
それに対してアリスが一度頷くと、
傍に置いてあった風呂敷代わりのマントを開く。
中からはもちろん先の決闘で得た十数の布袋があり、
その内の一つを手に取ると、ボブに差し出すようにテーブルに置いた。
「・・・上物よ」
「ほぅ、アリス嬢ちゃんがそう言うなら期待させてもらおうかな」
自信満々にそう言い切るアリスに、
ボブは何度か頷きながら布袋を手に取る。
結び紐を緩め布袋を目の前に広げると中から出てきたものはーー。
・・・『赤く輝く石』たち。
「ほほぅ、成る程、こりゃあ大したもんだ」
5~10センチの大小数十の石の内の一つを手袋をはめた手で取り、それを眺めながら感心するボブ。
次にズボンのポケットからルーペを取りだし、一つ、また一つと確かめるように慎重に観察していく。
それを黙って見守るアリス。
ーーやがてその作業も終わり、ルーペをポケットにしまいこむとボブは再びアリスと向かい合った。
「確かにこりゃあ上物だ。
こんなに大きくて輝きの強い『血石』には中々お目にはかかれねぇ」
アリスの自信を裏付けるようにボブも感嘆の意をあらわにした。




