表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅砂を駆けるスタンピード ~blood of jane~  作者: 天王寺綾香
二章 『ベガルタの剣』 ~邂逅の時~
195/265

P195

ーーだが。


無情にもティアマトーはそんなアリスの想いには応えてはくれなかった。

トリガーを引ききったにも関わらず、弾は発射されなかったのだ。


「しまーーっ」


ーーしまった。

アリスは思わずそう言いかけて言葉を詰まらせる。


そう、弾切れだ。

ティアマトーが銃弾を撃ち出すにはあるものが必要不可欠である。

それは『災厄ジェーン・ブラッド』。

アリスがティアマトーを使う際に『リロード』と称して管から血液を流す行為がそれである。

アリスはその度に一定量、自らの血をティアマトーに流し込んで、その性能を発揮していたわけだが、その量を使い果たしてしまえばまた『リロード』しなければならないのは通常の銃の装填と同じである。

あろうのことか、この土壇場でティアマトーは『血切たまぎれ』に至ったのだ。


「り、リローーっ!」


動揺しながらもそう宣言しようとするも、この隙をヴァージニスは逃さない。

地を蹴った足でアリスの腹部に強烈な足蹴りを見舞わらせる。


「ぐ・・・ふっ!」


まるで内臓を潰されるかのような衝撃。

血反吐混じりの逆流物がアリスの口から吹き出かける。

一方、ヴァージニスは蹴った勢いを利用して突き刺さったファフニールを一気に引き抜いてしまう。


アリスは当然のように腹を抑えながらその場でへたり込んでしまい、身体を小刻みに震わせる。

激しく咳き込み、地面には彼女が撒き散らした吐露物。


文字通り悶絶しているアリスに、ヴァージニスは距離を空けると、

ジャケットの裏側に備え付けてある鉄で出来た瓶状の物、すなわち爆弾を手に取る。

ジャケットの裏側にはまだ二つ、同じものが装備されている。

ヴァージニスは再三、これを敵に投げつけては銃で撃ち抜き、爆破という荒業を見せている。

通常ならば自らも巻き込まれる可能性が高いが、『超高速移動ハイパー・アクセル』が使える彼女は即離脱が可能なのだ。


アリスに対してもその爆弾で葬ろうというのか。

だがアリスにはもはや避ける体力はおろか、ヴァージニスの行動に対して反応する気力もない。


「ヴぁ・・・ヴァージニス・・・っ」


最後の気力。

それはもはやアリスの意識を繋いでいるだけのわずかな力。

その僅かな気力で首をもたげたアリスの瞳に映るは、狂気に囚われた悪魔の微笑み。

動けない自分にわざわざ爆弾を使ってその命を絶とうという残虐・醜悪。

肉親の手によって行われようとしているそんな非道に成す術のないアリスは、最期の時を覚悟しながら無念、悔恨の念に満ちた表情を見せるだけだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ