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紅砂を駆けるスタンピード ~blood of jane~  作者: 天王寺綾香
二章 『ベガルタの剣』 ~邂逅の時~
187/265

P187

「消えーーっ?」


ジャンヌの眼ですら追えないヴァージニスの動き。

奴が消えたーーそうジャンヌが認識するのと同時、背中から異物を刺し込まれるような感覚を味わう。

すぐに襲ってくる鈍い激痛。

ジャンヌは自分の腹部から黒い刃の切っ先を見るや、苦痛に喘ぐ叫びを上げた。


「ーー血を・・・血を流せ・・・紅い血を流せぇ・・・」


ヴァージニスは瞬間的にジャンヌの背後に回り込み、容赦なくその背中から黒く鋭い刃を突き立て、そして腹部まで貫いたのである。

止めどなく溢れだしたジャンヌの鮮血が黒い刃を伝って、ヴァージニスの手首を紅く染め上げる。


「もっと・・・もぉおおっとおおおぅっ!!

まだ足りないのよぉおおっ!

あふぅあああああああぁああっ!」


狂乱の声を上げながら突き刺した刃を中で力任せに回転させ、傷口を抉る。

ジャンヌの叫びと共に噴き出した鮮血を浴び、ヴァージニスは恍惚の表情を浮かべ、性的に昂り喘ぐような絶叫を上げる。


「き・・・貴様ぁっ!!」


想像を絶する苦痛を味わいながらも、ジャンヌの精神は折れたりはしなかった。

強く身体を右に振りかぶりながら、ゲイボルグを持った手で背後にいるヴァージニスを殴り付けようとする。

しかしその瞬間、体内を押すような異物感が消えたと思うと、振るった右腕は空を切った。

またしてもかき消えたヴァージニス。

訳の分からない気持ちと、あまりの深手に、振るった身体をうまく支えられず、ジャンヌの身体は大きく揺らぐ。

ーーいや、立っているだけでも精一杯、むしろ立つことが出来るのが不思議と言えようか。


おぼつかない足を懸命に支えながら、ふと前を見れば、そこにヴァージニスの姿はあった。

先程よりも刀身が『伸びた』赤黒く変色した刃を頭の上に振り上げたヴァージニスの姿ーー。


「ーーシャアアアアアアっっ!!」


獣のような叫びをあげて右上から袈裟斬りに降り下ろされた刃。


「が・・・ガ・ジャルグ・・・っ!」


ジャンヌはその刃を、自慢の鉄壁の盾、ガ・ジャルグで防ごうとしたーー。

が、赤黒い刃はそんな鉄壁をまるで意に介さず、バターのように切り裂きーー。

同時にジャンヌの身体も、左肩から右腰にかけて一直線の斬傷を負う。

ジャンヌの瞼は大きく見開き、瞳は充血している。

真っ二つにされたガ・ジャルグ、そして噴水のように飛び出す自分の血を見ながら、急激にその意識が薄れゆく。


だがヴァージニスはまだ許さぬ、と追撃をかけた。

背後に揺らいだジャンヌに向けて瓶型の鉄の塊を投げ付け、それを一瞬の内に銃のような形に変化させた黒い武器で撃ち抜くーー。


弾ける爆音ーー。

同時に巻き上がる火炎ーー。

赤い炎に包まれたジャンヌの影は地へと倒れ付した。

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