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「消えーーっ?」
ジャンヌの眼ですら追えないヴァージニスの動き。
奴が消えたーーそうジャンヌが認識するのと同時、背中から異物を刺し込まれるような感覚を味わう。
すぐに襲ってくる鈍い激痛。
ジャンヌは自分の腹部から黒い刃の切っ先を見るや、苦痛に喘ぐ叫びを上げた。
「ーー血を・・・血を流せ・・・紅い血を流せぇ・・・」
ヴァージニスは瞬間的にジャンヌの背後に回り込み、容赦なくその背中から黒く鋭い刃を突き立て、そして腹部まで貫いたのである。
止めどなく溢れだしたジャンヌの鮮血が黒い刃を伝って、ヴァージニスの手首を紅く染め上げる。
「もっと・・・もぉおおっとおおおぅっ!!
まだ足りないのよぉおおっ!
あふぅあああああああぁああっ!」
狂乱の声を上げながら突き刺した刃を中で力任せに回転させ、傷口を抉る。
ジャンヌの叫びと共に噴き出した鮮血を浴び、ヴァージニスは恍惚の表情を浮かべ、性的に昂り喘ぐような絶叫を上げる。
「き・・・貴様ぁっ!!」
想像を絶する苦痛を味わいながらも、ジャンヌの精神は折れたりはしなかった。
強く身体を右に振りかぶりながら、ゲイボルグを持った手で背後にいるヴァージニスを殴り付けようとする。
しかしその瞬間、体内を押すような異物感が消えたと思うと、振るった右腕は空を切った。
またしてもかき消えたヴァージニス。
訳の分からない気持ちと、あまりの深手に、振るった身体をうまく支えられず、ジャンヌの身体は大きく揺らぐ。
ーーいや、立っているだけでも精一杯、むしろ立つことが出来るのが不思議と言えようか。
おぼつかない足を懸命に支えながら、ふと前を見れば、そこにヴァージニスの姿はあった。
先程よりも刀身が『伸びた』赤黒く変色した刃を頭の上に振り上げたヴァージニスの姿ーー。
「ーーシャアアアアアアっっ!!」
獣のような叫びをあげて右上から袈裟斬りに降り下ろされた刃。
「が・・・ガ・ジャルグ・・・っ!」
ジャンヌはその刃を、自慢の鉄壁の盾、ガ・ジャルグで防ごうとしたーー。
が、赤黒い刃はそんな鉄壁をまるで意に介さず、バターのように切り裂きーー。
同時にジャンヌの身体も、左肩から右腰にかけて一直線の斬傷を負う。
ジャンヌの瞼は大きく見開き、瞳は充血している。
真っ二つにされたガ・ジャルグ、そして噴水のように飛び出す自分の血を見ながら、急激にその意識が薄れゆく。
だがヴァージニスはまだ許さぬ、と追撃をかけた。
背後に揺らいだジャンヌに向けて瓶型の鉄の塊を投げ付け、それを一瞬の内に銃のような形に変化させた黒い武器で撃ち抜くーー。
弾ける爆音ーー。
同時に巻き上がる火炎ーー。
赤い炎に包まれたジャンヌの影は地へと倒れ付した。