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吹き飛ばされながらも、直ぐに着地し足で制止を掛けるヴァージニス。
だがその間にジャンヌは手負いの身体を動かし、自らが投げたゲイボルグの側に立つ。
地に突き刺さったそれを引き抜くと、それをヴァージニスに向けた。
「ーーアリス・ジェーン・カナリーっ!
さっさと白銀の銃剣を拾えっ!」
「ジャンヌさん・・・っ!」
「今、奴は明らかにそれを狙っていた。
奴にそれを奪われては面倒な事になるっ!」
そう、ヴァージニスは明らかに白銀の銃剣・ティアマトーを狙っていた。
アリスなどには目もくれず、である。
ジャンヌはそれを阻止し、そしてアリスに伝えたのだ。
「ーーティアマトー・・・っ、よこせぇ・・・っ!
それとこの『ファフニール』が揃えばぁ・・・あたしはぁ・・・あたしはぁっ!」
ヴァージニスが『ファフニール』と呼んだ黒い短剣に舌舐め擦りをしながらゆらりと前に出る。
その不気味な笑みには見る者を不安にさせる不気味さがあった。
ーージャンヌが喰らわせた『咆龍衝』。
アリスに大きなダメージを与えた技だが、ヴァージニスにはダメージと呼べるような成果を上げたとは言い難く、ジャンヌは舌打ちする。
「ーー急げっ、アリスっ!
白銀の銃剣・・・今一度、貴様に預けるっ!」
ジャンヌは自分が足止めしている間にアリスにティアマトーを拾わせようとしているのだ。
そのためにはヴァージニスをティアマトーに近づけん、と自ら前に出てヴァージニスに挑む。
託されたアリスはふと傍のクリークを見た。
「ーーまぁ、仕方ありませんね。
奴の力が得体の知れないものである以上、ここは協力、共闘といきましょう。
あ、この人の面倒は僕が見てますので」
ジャンヌやクリークも白銀の銃剣を手に入れようとする者たちである。
だが状況を考え、クリークもまた再びアリスにティアマトーを握らせることを容認した。
更にリリィの面倒を見てくれるという言葉を信じ、アリスは一つ頷いてそれを返事とする。
そしてアリスは真っ直ぐ、ティアマトーの元へと駆け出した。
距離は三、四メートルほどか。
アリスの足ならば数秒で拾うことが出来る。
だがその間にもジャンヌとヴァージニスは激しい攻防を繰り広げていた。
前に出たジャンヌがヴァージニスの身体の中心を狙って、ゲイボルグを突き出す。
だがヴァージニスのその身体はジャンヌの視界から瞬間的に消え去った。