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「ーー『爪龍燕』っ!」
倒れたアリスの方向に向けて、振りかぶられるゲイボルグ。
そこから放たれた巨大な三日月状の白い刃が疾空し、アリスの身体のすぐ上を通過する。
敢えて外したその一撃は真っ直ぐにその先の内壁へと飛来し、轟音と共に壁を破壊して瓦礫の山をその場に築く。
壁に刻まれた数メートルにも及ぶ巨大な爪痕。
ジャンヌの人間離れした技の威力を物語っていた。
身体を切り刻まれ、至るところから出血しているアリス。
だがそのあまりの破壊力に、痛みすら忘れたように呆然とその爪痕を眺めていた。
「ーー少しは分かったか?
我が『気功術』の威力を」
ジャンヌがアリスの方に一歩踏み出す。
傷の深さに未だ起き上がれないアリスは、倒れたまま白く輝く『軍神』を見る。
「『咆龍衝』が余程効いたようだが・・・もうまともに立つことも出来ないとは、口ほどにもないな」
また一歩、ゆっくりと踏むジャンヌ。
見下しながら放たれた言葉に、アリスは地に両手を付き必死に起き上がらせようとする。
「アリス・ジェーン・カナリー。
ジェーンの血を引く者、として期待したがーー見込み違いか」
更に一歩。
この段階でアリスはようやく立ち上がる。
だがその地面には彼女が流した血に染まっている。
傷を癒すというティアマトー。
その不思議な力を以てしても、傷が深すぎるため、回復が追い付いていないのか。
「これではあの伝説のカラミティ・ジェーンとやらも大したことはなかったのかもしれんな。
だとするなら・・・興ざめも甚だしいというものだ」
一歩、踏み出しながら言い放たれたその言葉に、アリスは一気に闘志を爆発させた。
伝説のカラミティ・ジェーン、すなわち祖母マーサを貶めるような言い方をされて怒りに心を奮わせたか。
未だ癒えない身体で強く地を蹴り、果敢にジャンヌへと立ち向かう。
前に出ながら、銃形態のティアマトーのトリガーを連続して引き、
三発の弾丸がジャンヌを撃ち貫こうとするが、
鉄壁の盾、ガ・ジャルグがそれらをことごとく弾き飛ばしてしまう。
「ーーうぅああああああああぁっ!!」
普段冷静なアリスが吠えた。
ティアマトーを短剣形態へ戻すと、その刃でガ・ジャルグを相手取り、真っ向から斬りかかる。
阻む白銀の装甲。
しかしアリスは力で振り切ろうとするようにティアマトーの刃をガ・ジャルグに押し付ける。
猛るアリスに対し、ジャンヌは涼しい顔でその様を見ていた。