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「改めて自己紹介しますね。
僕はクリーク・ヴァン・モラルタ。
星頂守護機関・特殊任務実行部隊、セット・エトワールの一員を担わせてもらっています」
「星頂・・・守護機関?
しかもそのセット・・・エトワールって?」
羽織っている緑と白のストライプ模様の、ストールのような布の後ろに隠れていた逆流れ星の刺繍を見せながら、そう自身の身分を明らかにしたクリーク。
セット・エトワールという単語を聞き、アリスはマルガリータの亡骸に目を移す。
「はい。
このマルガリータさんも同じセット・エトワールで、僕と同様に星頂守護機関の人間でもあります」
「だから、なん、なのよ・・・そのセット・エトワールって」
「そうですね・・・簡単に言えば、元老院直属の特殊部隊です」
「元老・・・院?」
「僕たちの上司です。
言ってしまえば星頂人の中でもっとも偉い方々ですよ」
目新しい単語ばかりでアリスも整理に若干戸惑っているようだ。
「わ、私も聞いたことがあります。
元老院って、私たち星頂人の政治を取り仕切り、この世界の全ての人間の頂点に立っている方々とか」
「リリィ・・・あんた、もう大丈夫なの?」
「お姉様の傍にいて、少し落ち着きました。
まだ気持ちがゆらゆらしてる感じですけど・・・」
「もう、バカ・・・。
だから付いてくるな、って言ったのにーー」
リリィが見せる精一杯の笑顔にアリスも安心したような笑みを見せる。
言葉では毒づきながらも、命を助けられた手前、アリスもあまり強くは叱らない。
「ーーで、あんたもあたしの命を取ろう、ってわけ?」
アリスが再びクリークに睨むような目付きで視線を戻した。
「いやいや、そんなつもりはないですよ」
「だってそいつは、いきなりあたしを殺そうとしたのよ」
「まぁ、彼女にも色々と事情があったんですよ。
ただアリスさんを殺されては正直、僕の立てていたプランがご破算になるところでしたので、ある意味ではリリィさんには感謝してますよ?
とはいっても、殺されたのは計算外でしたけどね」
笑い声を上げながら、どこか嫌味のある言い方。
それがリリィの表情に再び影を差し、アリスはクリークを強い視線で睨み付ける。
するとクリークは慌てた様子で冗談ですよ、と愛想笑いで茶を濁そうとするが、アリスの表情は当然というべきか変わりがない。