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「それに、しても・・・リリィ、あんた、どうやってここまで・・・?」
当然の疑問だった。
アリスの機転によって阻まれているとはいえ、後ろからは追手が迫っているはず。
にも関わらずリリィは何故ここに辿り着けたのか?
そもそも置いていかれたリリィが何故、アリスがここにいることを知り得たのか?
「ーー僕がご案内したんですよ」
するとリリィがいた方向からもう一人の人物の声が聞こえ、アリスが睨みを利かせる。
そして暗がりから現れたのは、小柄な体格に人の良さそうな笑顔を浮かべた少年と思しき人間。
「あ、あんた・・・、だ、誰・・・?」
「あれれ、僕の事、お忘れですか?
まぁ、僕は影も印象も薄いですからね」
頭に手を遣りながら苦笑いを見せるその少年。
言われてみればどこかで見た顔だが、アリスはとんと思い出せないようだった。
「シーブス・タウンで宝石商を営んでいたクリーク、という者です」
「・・・ああ、あの、時の・・・」
アリスは思い出した。
数週間前。
まだ白銀の銃剣を入手する前、ゼニス・ドマ・センチピードを探していた自分に、アスピーク・タウンにいるという情報を流してくれた宝石商である。
だがその人間が何故ここにいるのか。
また何故リリィをここに連れてきたのか、そしてどうやってここまで来たのか。
色々と疑問はあったが、アリスはそれを一度に口に出すことは出来ない。
するとそんなアリスをよそに、クリークはアリスの傍らを通りすぎ、倒れ付したマルガリータの側に寄る。
「それにしても、人助けのつもりがこんな結果になるなんて・・・いやぁ、マルガリータさんには悪いことしましたよ」
何度か触って反応がないことを確かめたあとで、明るい笑い声を上げるクリーク。
その表情には全く悪びれた様子は感じられない。
「あんたが・・・リリィを、ここまで・・・?」
「ええ。
表でアリスさんを探しておられたようなので、可哀想に思ってここまで案内したんですよ。
ですがまさかマルガリータさんを撃ち殺してしまうとは思いもしなかったです。
いやぁ、困りましたねぇ」
「あ、あんた、一体・・・?
そのマルガリータ、って奴の知り合い、なの?」
撃ち殺した、という言葉に反応して身体を震わせるリリィ。
アリスは痺れているはずの腕を動かし、リリィの頭に手の平を乗せると、さらにクリークに問いかける。