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紅砂を駆けるスタンピード ~blood of jane~  作者: 天王寺綾香
二章 『ベガルタの剣』 ~邂逅の時~
156/265

P156

「(この異様な痛み・・・まさか、毒をーー?)」


「さっそく効いてきたな。

このナイフには強力な痺れ薬が塗ってある。

時期に全身が麻痺して動けなくなるだろうな」


マルガリータと名乗る襲撃者が言うように、既にアリスの身体は蝕まれ始めていた。

最初は強く痛んでいた患部がやがて急激に薄まり、同時に己の一部で無くなったかのように、弛緩した左腕がぶらりと下がる。


「あ、あんた、一体・・・?

いつからあたしの事をーー?」


突然訪れた危機に焦りながらも、右手に短剣形態のティアマトーを握らせるアリス。

しかし既に全身に廻り始めた痺れ毒により、アリスは態勢を維持することすら困難になり、その場に座り込んでしまう。


「ーーお前がこのノース・フロンティアに踏み入ってからずっとだ。

機を見て貴様の命を奪い、その白銀の銃剣を頂くことが私の任務」


「そ、そんなーーっ!」


アリスはマルガリータの言葉に驚愕させられる。


ノース・フロンティアに辿り着いた時から見張られていたーー?

自分はそれにずっと気が付かなかったというのか?

今もそう。

敵が攻撃をしてくる段階になって初めてその気配に気付いた。


アリスは己の迂闊さを激しく悔いた。

こんな危険な存在を背後に置きながら、まるで気が付きもしない自分にーー。


「覚悟しろ、アリス・ジェーン・カナリー。

もはや指一つまともに動かせまい」


じりじりとにじり寄るマルガリータ。

ティアマトーは何とか握ってはいるものの、力は入らずまして振るうことなど出来るはずもない。


「(あたしの名前も・・・このティアマトーの事も知ってる・・・。

こいつ一体・・・?

セット・エトワールって・・・)」


近付くマルガリータから逃げようとするも、身体は全く言うことを聞いてはくれない。

アリスは絶望した。

長年追い続けてきた者を前にしながら、こんなところで果てるのか、と。

たった一度の油断。

それが自分のこれまでを全て否定し、無に帰してしまうのかーー。


マルガリータはついにアリスの眼前に迫った。


「ーー我が一族に恥辱を与えた憎きジェーンの血を引く者。

今こそこの私がその息の根を止める!」


「い、一族・・・っ?」


「ーー死ねっ!」


「(お、おばあちゃんーーっ!)」


迫るナイフ。

絶対絶命のこの状況ではアリスもただ祈るしかなかった。

だが祈ったところで、どうにかなるはずもないのはアリスだって分かっている。

あるいは死を目前にした覚悟でもあったのかもしれない。


ーーしかしその祈りは通じた。

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