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紅砂を駆けるスタンピード ~blood of jane~  作者: 天王寺綾香
二章 『ベガルタの剣』 ~邂逅の時~
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P152

さらにこの時、アリスはランプに『ある細工』を施した。

アリスが町で事前に準備しておいたものである。

他に用途があったのだが、アリスはここでそれを使用した。


「(よし・・・これで、追手も簡単には追ってこられなーー)」


後ろを気にしつつ、前に進んでいたが、そのせいで不意に何かに足を取られそうになる。

ーー柔らかい感触。

アリスはそこにあったものを見て、驚きこそしなかったものの、表情が一気に険しくなる。


「(あの町の鉱夫さん・・・か。

これも奴の仕業かーー)」


ランプの灯りだけが頼りの暗がりの道。

そこに突っ伏していたのは男の惨殺死体。

かなり時が経っているのが素人にも見て取れ、刃物による生々しい傷痕は見る者によっては吐き気を催すだろう。


「(ヴァージニス・・・っ!)」


星頂守護機関が意味もなくこんな事をするはずがないとすれば、やったのは恐らくここに潜む邪悪な殺戮者。

『黒い刃を持つ女』に違いないーー。

アリスも良いようのないその黒い気配を、肌に痺れるかのように強く感じ取っているようだ。


アリスは無関係な人間がこうも無惨に殺され、捨てられているのを見て怒りをあらわにする。


「(今日で・・・終わりにしてやる。

もう二度と災厄を振り撒かせはしない・・・っ!)」


手を強く握りしめ、心の中で決意を強く奮い立たせる。


ーーもう少し、あと少しの距離まで自分は近付いているはず。

同じ血を引くーー、いや自らの血を『子』として産み落とした『母』との再会。

その邂逅の時に何を生むのか、そして失うのか。

狂乱に溺れ、血に飢えた悪魔と化した『同じ血』に自分はどんな形で終わりをもたらすのか。


ーーアリスだけが知るその答え。


「おばあちゃん・・・。

ーーおじいちゃん。

あたしを見守っててーーっ」


それを為すためにアリスは更に前へと進む。

彼女の長い旅、その終焉が近づこうとしていた。

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