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「・・・アリスよ。
アリス・ジェーン・カナリー」
「アリス・・・『ジェーン・カナリー』・・・?」
そしてデックの質問に答えるように再び名乗るアリス。
ミドルネームを含めたその名前に短身の男が反応を示した。
「まさか・・・。
なんてこった・・・」
デックが大きく唾液を飲みこむ。
彼の中で何かの辻褄が合った。
そして押し寄せてきたのはさらなる驚き。
知らなかったとはいえ、
自分たちはとんでもない『血』と銃を向けあっていたのだ――。
そしてアリスは銃を腰のホルダーに投げ込むようにしまい込むと、
再び男たちに背を向けた。
そしてまた歩き出すアリスに、
手の痺れに耐えていたバイスが再び目を光らせる。
もう一挺の銃を痺れが治まったばかりの手で握り込み、
アリスの背に向けようとする――。
「――よせっ!」
その瞬間、止めを入れたのはデック。
怒号にも似たその声に、
バイスもアリスに向けようとした銃も中途半端に止め、
横やりを入れたデックスを睨み付けた。
「やめねぇか・・・、
あのまま行かせるんだよ・・・!」
「けっ、腰抜けが!
あんな小便娘になめられて黙ってられるかっ!」
「命を助けられたのが分からねぇのかっ!」
警告するように制止する声にも聞く耳持たないバイスに、
デックは今までにない一際大きな怒鳴り声を上げた。
さすがのバイスもその声には驚いたように一瞬身を震わせ、
見開いた目で短身の男を見る。