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紅砂を駆けるスタンピード ~blood of jane~  作者: 天王寺綾香
序章 アリス・ジェーン・カナリー
15/265

P15

「・・・アリスよ。

 アリス・ジェーン・カナリー」


「アリス・・・『ジェーン・カナリー』・・・?」


そしてデックの質問に答えるように再び名乗るアリス。

ミドルネームを含めたその名前に短身の男が反応を示した。


「まさか・・・。

 なんてこった・・・」


デックが大きく唾液を飲みこむ。

彼の中で何かの辻褄が合った。

そして押し寄せてきたのはさらなる驚き。

知らなかったとはいえ、

自分たちはとんでもない『血』と銃を向けあっていたのだ――。


そしてアリスは銃を腰のホルダーに投げ込むようにしまい込むと、

再び男たちに背を向けた。

そしてまた歩き出すアリスに、

手の痺れに耐えていたバイスが再び目を光らせる。

もう一挺の銃を痺れが治まったばかりの手で握り込み、

アリスの背に向けようとする――。


「――よせっ!」


その瞬間、止めを入れたのはデック。

怒号にも似たその声に、

バイスもアリスに向けようとした銃も中途半端に止め、

横やりを入れたデックスを睨み付けた。


「やめねぇか・・・、

あのまま行かせるんだよ・・・!」


「けっ、腰抜けが!

あんな小便娘になめられて黙ってられるかっ!」


「命を助けられたのが分からねぇのかっ!」


警告するように制止する声にも聞く耳持たないバイスに、

デックは今までにない一際大きな怒鳴り声を上げた。

さすがのバイスもその声には驚いたように一瞬身を震わせ、

見開いた目で短身の男を見る。

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