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「ひょっとしてなんだけど・・・名を売りたい本当の理由ってお姉さんのために?」
「・・・はい。
別れて一年、色んなところを探してみたんですが、世界は広くて・・・。
それだったら有名になって自分の場所を知らせれば、会いに来てくれるかな、って」
「だからって何も賞金首ナンバーワンを目指さなくても・・・」
リリィは真剣なようだが、アリスはどうにもやり方を間違っているように思えてならず、思わず苦笑いしてしまう。
「その曲撃ちって、誰に教えてもらったの?」
「あ、それは小さい頃から練習して。
私、昔からガンマンっていうのに憧れてまして~」
「本当のガンマンはあんなことしないけどね・・・」
「ええーっ、でもあの有名な『カラミティ・ジェーン』はやってたって・・・」
「(まぁ・・・おばあちゃんなら出来た、かもね)」
リリィの口からまさか祖母の異名が出るとは思わず、アリスは困ったように頬を掻く。
「ま、とにかくよ。
名を売るなら売るで、もっと別な方法があると思うわ。
さっきも言ったけど、曲撃ちでお金稼ぎながら世界を回ることだって出来るじゃない」
「お姉様・・・」
「いいから『奴』に手を出すのは止めなさい。
無茶してあなたが死にでもしたらお姉さんが悲しむでしょ?
お姉さんだってきっとあなたを探してるわよ」
再度アリスはリリィに説得を試みる。
するとそこまで言ってリリィは突然満面の笑顔を見せる。
アリスがその笑顔に押されるようにしていると、次にリリィは立ち上がってアリスの横に座る。
「やっぱり・・・似てる」
「へ?」
「お姉様、素っ気ない振りして本当は優しいんです。
私の本当のお姉様もそうでした」
「な、何言ってんのよ。
あたしは別にそんなつもりでーー」
顔を近付けてそんな事を言われ、アリスは照れたように頬を紅く染めながら目を背ける。
そんなアリスを見てリリィがまた微笑むと、その身をアリスに預けてきた。
「ちょ・・・っ、な、何よ!」
「お姉様の身体、あったかぁい・・・」
戸惑うアリスに対し、身を預けたまま目を閉じたリリィはそのまま
眠りこけてしまうのだった。
さすがに弾き飛ばすのは気が引けたのか、ここはリリィの好きにさせてやることにした。
「もう・・・今日だけだよ」
自分をお姉様と慕うリリィ。
星頂人にもこんな人間がいるのだと知ったアリスは新鮮な気分を味わうのと同時に、どこか嬉しそうでもあった。