P146
「ど・・・どうして分かったんですか?」
リリィが不思議そうにアリスに訊く。
するとアリスは小さく息を付きながら笑みを浮かべる。
「その高そうな服、肌の色、世間知らずで浮いた雰囲気、それとさっきからあんたが食べてるそのお菓子。
あたしたち開拓民にはそうそう食べられないものよ、それ」
「はわぁ・・・すごいです、お姉様」
「バレバレよ・・・全く」
リリィは素直に認めた。
そしてアリスの観察眼に感心するが、むしろリリィが情報を晒しすぎ、とでも言いたげなアリスの表情があった。
「で、星頂人のあんたがわざわざ開拓民の町に出て来てどうしようっての?
名を売りたいだけが本当の目的じゃないでしょ?」
アリスは更にリリィを問い詰めた。
リリィは最初は話しにくそうにしていたが、やがて少しずつ、断片的に話し始めた。
要点がまとまらない話にアリスは最初は困惑していたが、回転の良い頭がそれを整理した。
「つまりこういうこと?
あんたの御家が没落して一家離散。
セントラル・シティに居場所が無くなって、ここに流れてきたってわけ?」
リリィが小さく頷く。
辛い過去だったのだろうか、ひどく落ち込んだような表情を見せている。
「ふーん・・・星頂人って基本、みんな不自由ない暮らしをしてるって話だけど、そういう御家とか、家名を重んじた格差社会になってるってのは本当だったのね」
頬杖をついたアリスが呟く。
星頂人は開拓民よりも進んだ文明の中で不自由ない暮らしを送っている。
だが、星頂人の中にも格差が存在しているらしく、例えば下流に属する者たちは上流や中流に飼われている者たちがほとんどだ。
アスピーク・タウンにおけるパリストと、その配下たちが良い例と言える。
そしてリリィの御家、フェルベルイット家は元々、中流に属する家柄であったが、懇意にしていたある上流の家の機嫌を損ね、
フェルベルイット家はその報復により潰されてしまったという。
それによりリリィの両親は処刑され、もう一人の家族とは離ればなれになったのだそうだ。
「ーーお姉ちゃんがいるの?」
「はい・・・その時に別れて、それっきりなんです」
リリィには姉がいるのだという。
そしてそれを聞いたとき、アリスにはリリィがやろうとしている事が何となく分かったのだ。