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アリスは町の中に入れない以上、これ以上情報は得られない、と判断。
次の行動に移る。
兵の言われた通りにその場から離れつつも、町の外側から回り込むように移動する。
無論充分に距離を維持しているため、兵たちに悟られたりはしない。
リリィもそのアリスを、少し距離をとって追う。
ーーかなりの距離を歩き、やがて町の反対側が見える位置まで移動した。
するとそのすぐ近くにいくつかの巨大なテントを遠目に発見することとなる。
遠目からでも分かるほど、夥しい数の兵隊たちがその周辺を行き来している。
アリスは確信した。
あそこが星頂守護機関の宿営地である、と。
「さて・・・どうしたものかな」
足を止めてアリスは思考を巡らす。
読みは当たっていた。
拠点を築き、あのジャンヌという女の言葉を信じるなら明後日の討伐作戦に向けて準備を整えているに違いない。
そしてその場所はここからそう遠くない位置にあるはず。
だがそれを知る術が今のところない。
探りを入れようにも警戒が厳重すぎて近付くこともままならない。
無理をして、星頂守護機関と衝突することだけは避けなければならない。
かといって協力を申し込もうにも、連中からすれば開拓民の一人でしかない自分の言葉に耳を傾けたりはしまい。
ーーアリスは一つの結論に至った。
そしてすぐに行動。
アリスは踵を返し、来た道を戻り始める。
「あ、あれ?
お姉様、どこに行くんですかぁ?」
顔を合わせたリリィが不思議そうにアリスに聞く。
「・・・一度、ブルーツに戻って仕切り直すわ。
こっちも色々、準備をしておかないと」
「準備・・・ですか?」
「明日って言ってもまだ時間があるわ。
こっちもどう動くのか考えとかないとーー」
そう言ってアリスは足を止めたリリィの横を通りすぎる。
リリィはアリスの見通す先が見えず、首を傾げるようにしながらもその後を追った。
冷静に努めながらも、アリスはある予感を感じていた。
すなわち『邂逅』の時は近付いているのだ、と。
八年の旅を経て受け継いだ、腰に差すティアマトーに手を触れさせながらアリスは自らの内にある決意を改めて固めていた。