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紅砂を駆けるスタンピード ~blood of jane~  作者: 天王寺綾香
二章 『ベガルタの剣』 ~邂逅の時~
137/265

P137

「ーーねぇ、お姉様?

お姉様はどこに向かってるの?」


アリスとリリィが歩き始めて二十分程。

リリィはまるで遠足気分のように、リュックからお菓子を取りだして食べ歩く。

差し出したお菓子を断り、黙々と地面に目を遣りながら歩くアリスにリリィが聞いた。


「・・・星頂守護機関を追ってるのよ」


「星頂・・・守護って、さっきの人たちですかぁ?

あの人たちに何か用なんですか?」


「『あいつ』の居場所を知ってるかもしれないの」


「あいつ?」


「・・・『黒い刃を持つ女』よ」


「わぁ、さすがお姉様!

既に私たちの名前を世界に売り出す計画は動いてるんですね!」


アリスはリリィの認識の浅はかさにため息をついた。


そして心底悩んでいた。

正直言って、リリィの存在は邪魔である。

リリィを連れたままでは、雌雄を決すべき戦いにおいて必ず足手まといになるからだ。


だからといって説得が通じるような相手でもない。

また撒こうにもこの見晴らしの良い荒野では、相当逃げなければならないだろう。

いっそのこと、『寝てもらうか』ーー、それも最後の手段であるが、アリスは出来るだけ乱暴なことはしたくなかった。


ならばどうするーー八方塞がりのような状態である。


「そういえばお姉様はなんで『黒い刃を持つ女』を狙うんですかぁ?

やっぱり狙いは賞金ですかぁ?

あ、でも賞金は無しになったんでしたっけ」


「ーーお金なんて・・・いらない」


「そうなんですかぁ?

じゃどうしてーー」


「あなたに関係ないでしょ。

これ以上あたしの事を探ろうとしないで」


アリスが冷たく言い放つと、リリィは少し拗ねたような表情を見せるが、それでもアリスの後に付いてくる。

アリスはリリィに冷たい態度を取り、何とかそれで自分を見限ってくれれば、と期待を抱いていた。

ただ仲良くしようとしてくれる人間に、そういう態度を取るのはアリスも気が引ける思いだった。

だがこのまま自分に関われば、リリィに災厄を招く事になりかねない。


ーーアリスの脳裏にアシュフォード、そしてマリアの顔が一瞬過り、痛みに耐えるかのように目を瞑った。


「(もう・・・嫌よ!

この『血』のせいで他の人たちが死ぬのを見るのはーーっ)」


自分のせいで誰かが死ぬくらいならば、嫌われる方が余程いい。

その方が遥かに悲しみが小さく済む。

たとえ最後は自分一人きりになったとしても、周りが屍の山よりは、自分を無視してくれる人間で溢れている方が遥かに良いーー。

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