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立場もそうだが、あらゆる面において人を超えるーー超人的なものをアリスは感じていた。
それからもアリスは咎められないよう、その集団を追いかけながら動向を見守る。
するとその一団は町人たちの興味を引く中、さっきアリスが見ていた看板へと近付いていき、先頭の女性が目配せをすると、集団の中から一人が飛び出し、張り紙の一つを剥がしてしまった。
剥がしたのはあの賞金首筆頭、『黒い刃を持つ女』である。
その様を見てアリスが思わず足を出そうとして踏みとどまる。
何故剥がしたのかーー?
そんな声が出そうにもなったアリス。
だがその代わりとでもなるように曲撃ちの少女が飛び出した。
軍服の人間の一人に掴みかかり、アリスが思った疑問をぶつけているようだ。
だが掴んだ手を振り払われ、少女は地面に尻餅をつく。
その少女の周りを取り囲む軍服の人間たち。
アリスは今度こそ足を前に踏み出させた。
だがそんなアリスを鋭い『気』の一閃が止めさせた。
それを放ったのはあの白銀の美女。
ーー強力な気合いの一閃。
まるで壁に当たったかのようにアリスの身体は弾かれた。
そして再び睨み合う両者。
他の者たちは曲撃ちの少女に意識がいっているというのに、この二人はまるで違う世界にいるように、視線を合わせていた。
その緊張を先に破ったのは白銀の女の方だった。
アリスから目を逸らした彼女は軍服の者たちを制して、曲撃ちの少女の前へと立つ。
そして集まった町人たちを見渡すようにしながらその口を開いた。
「ーー聞けっ!
私は星頂守護機関・特務管理局副隊長、ジャンヌ・フォン・ベガルタであるっ!」
猛るように声を張り上げる白銀の女。
その名をーージャンヌ。
「(ジャンヌ・フォン・『ベガルタ』・・・?
ひょっとして、あれが噂に聞く星頂人の一枚岩、『ベガルタの剣』・・・?)」
アリスがふと思い当たったように小さく口ずさむ。
その名前に聞き覚えがあったようだ。
「(確か数年前、反乱を起こした開拓民たちの組織をわずか数日で滅ぼしたって話題になったあの『ベガルタの剣』。
・・・あんな綺麗な女性だったなんて意外だけど)」
アリスの想像ではその人物はどんな風貌だったのか。
恐らく実際にこうして見た本物とは、似ても似つかない姿だったのだろう。
そのジャンヌは名乗りを上げたあと、続けて叫ぶように何かを語っているようだ。